研究課題
本年度は、合成の格段の効率化の新たな方向性を示す独創的な骨格構築法および酸化反応を基盤とした、特異で複雑な骨格を有する以下のアルカロイドの合成研究を行った。ジチオジケトピペラジン系アルカロイドの合成に関しては、強力な抗がん活性を有するMPC1001Bをリード化合物とした構造活性相関研究を視野に入れ、昨年度確立した合成経路をもとに、その類縁化合物や誘導体の合成を行った。さらに、抗HIV作用を有するエピコッシンGの不斉全合成を達成した。アザスピロ系アルカロイドの合成に関しては、申請者が見出した不斉転写型ラジカル転位環化反応を駆使し、(-)-ヒストリオニコトキシンの不斉全合成を達成した。含窒素多置換複素環構造を有するアルカロイドの合成に関しては、オキシムスルホナートの新規環拡大反応を新たに開発し、CC-1065の不斉全合成を達成した。さらに、申請者が開発したベンザイン生成-環化-官能基化のカスケード反応を駆使し、全置換ベンゼン環を母核とするplakinidine Bの主要な四環性骨格の構築に成功し、全合成経路確立への大きな足がかりを構築することができた。スピロアミナール系高次縮環型アルカロイドの合成に関しては、独自に開発したAgNTf2 を用いたFriedel-Crafts 反応やチオールを用いたアミンの空気酸化反応を駆使し、ハプロファイチンの第二世代全合成を達成した。さらに、生体内酵素を模倣した触媒開発を行い、分子状酸素を利用したトリプトファン誘導体の世界初の触媒的二量化反応の開発に成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたエピコシンG、CC-1065、(-)-ヒストリオニコトキシン、ハプロファイチンの全合成を達成しただけではなく、生体内酵素を模倣した触媒開発により、分子状酸素を利用した新たな酸化反応の開発に成功した。分子状酸素を利用した本酸化反応は、既存の酸化反応と比較して化学選択性に優れており、その有用性や環境調和性の観点からも評価できる。
これまでに確立した研究をもとにテレオシジン、プラキニジン、ボカンジミンの全合成を達成する。また、昨年度に引き続き、アコニチン系アルカロイドの基本骨格の構築法の確立を目指す。さらに、その特異な生物活性により新規抗がん剤のリード化合物として期待されるケトミンやメリナシディンIVの世界初の全合成を達成し、その後、創薬研究を指向した研究を行う予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 10件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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