本年度は、合成の格段の効率化の新たな方向性を示す独創的な骨格構築法および酸化反応を基盤とした、特異で複雑な骨格を有する以下のアルカロイドの合成研究を行った。それぞれのサブテーマに関して、以下に本年度得られた結果を記載する。ジチオジケトピペラジン系アルカロイドの合成に関しては、初年度に達成したMPC1001Bの全合成で確立しているモノマーユニット合成法を基盤に、類縁化合物であるアステロキセピンおよびエメストリンHの不斉全合成を達成した。アザスピロ系アルカロイドの合成に関しては、前年度達成したヒストリオヒコトキシンの全合成の過程で見出した、第二級アミドの還元的アリル化反応の基質一般性について広く検証するとともに、カストラミンの不斉全合成に適用することで、キノリジジンアルカロイドの効率的合成における本反応の有用性を示した。含窒素多置換複素環構造を有するアルカロイドの合成に関しては、オキシムスルホナートの新規環拡大反応について、基質適用範囲を検証した。さらに、オルトキノンを経由するカテコールの酸化的連続環化反応を駆使し、ディスコハブディンVの主要炭素骨格を構築することに成功し、全合成への足がかりを確立した。また、申請者が独自に開発したベンザイン生成-環化-官能基化のカスケード反応を用いて、全置換ベンゼン環を母核とするプラキニジンBの主要な四環性骨格の迅速合成に成功するとともに、β-ラクタムを用いた分子内Friedel-Crafts反応を経て世界初の全合成を達成した。
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