研究課題
生物活性天然物からの医薬品としての合理的な開発は、現代科学における緊急課題である。分子量が500を超え酸素官能基が密集した巨大複雑天然物は、一般的な医薬品や天然物では実現不可能な、タンパク質の高選択的阻害・活性化を可能にする。平成28年度は、①ラジカルを利用した収束的合成戦略、②巨大複雑天然物の全合成と③天然・人工類縁体の合成研究を同時進行させ、多くの重要な成果を得た。16報の学術論文の出版と10件の招待講演を行うに至り、国内外から高い評価を得た。①ラジカルを利用した収束的合成戦略の開発: 化学的に安定なa-アルコキシアシルテルリドを利用して、独創的なラジカル-ラジカル-クロスカップリング反応を開発し、抗生物質ヒキジマイシンの9連続不斉中心を有するポリオール側鎖の1工程で創出した。本成果は、収束的合成戦略の革新的進歩に繋がる重要なものである。②巨大複雑天然物の全合成: 新規高脂血症治療薬として期待されるザラゴジン酸Cの全合成を達成した。ここでは、ラジカル反応を利用して化学・立体選択的な炭素-水素結合の官能基化を実現した。また、タンデムラジカル環化および向山アルドール型環化を鍵反応として、プベルリンCの有する6環性骨格の構築に、世界で初めての成功した。これらの鍵反応は、多数の極性官能基存在下進行するため、様々な類縁天然物を統一的に全合成する強力な方法論となる。③天然・人工類縁体の合成研究: 項目①および②を応用展開することで、巨大複雑天然物の様々な人工類縁体の構築を実現した。イオンチャネルに対する選択的作用が期待されるタラチサミンおよびプベルリンCの類縁体、多様な活性が期待されるアガロフランの類縁体を調製した。また、ペプチド系天然物であるヤクアミドBの14個の人工類縁体の合成と機能評価を推進し、天然物のアミノ酸の立体化学が細胞毒性に与える影響を解明した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 16件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件、 招待講演 10件) 備考 (1件)
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