研究課題/領域番号 |
26253014
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
老木 成稔 福井大学, 医学部, 教授 (10185176)
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研究分担者 |
炭竈 享司 福井大学, 医学部, 特命助教 (30579412)
岩本 真幸 福井大学, 医学部, 助教 (40452122)
角野 歩 福井大学, 医学部, 特別研究員 (80717140)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チャネル / 細胞膜 / 集合・離散 / ゲーティング |
研究実績の概要 |
イオンチャネルは他の膜蛋白質と同様、細胞膜上を動き回り、チャネル間で集合・離散を繰り返し、同種のチャネル同志が密な集合体を形成することがある。しかし、集合・離散状態でチャネル機能がどう変化するかということに関する報告はない。その理由は、チャネル一分子の機能状態と集合・離散を同時に捉える実験手法がなかったからである。最近私達は原子間力顕微鏡により、チャネル個々のゲート開閉構造を初めて捉えることに成功し、開閉に伴って膜上で集合・離散することを発見した。本研究ではこの成果をもとに、チャネルのどのような構造変化が膜上での集合・離散を引き起こすのかその分子機構を解明する。チャネル機能発現に集合・離散が密接に関わるという未知の局面を明らかにし、チャネル生理機能の新しい調節機構を提案したい。 チャネルの膜上での機能を明らかにするために、従来私たちが使ってきた脂質平面膜法を改良し、顕微鏡での観察と膜の特性を変えることのできる方法を開発した。特にこの方法では膜脂質組成をリーフレットごとに変えるだけでなく、膜の曲率を変えることができ、チャネルのゲーティングや集合・離散における機械的な影響を検討することができる。さらにさまざまな物質を使って膜の曲率を変えた実験も開始している。これとは平行して原子間力顕微鏡の高空間・時間分解能の測定を目指している。一方、計算機シミュレーション(分子動力学法)を使って、チャネルを透過するイオンの新しい振る舞いを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チャネルの膜上での振舞いを明らかにするための新しい方法を開発し、論文として発表した。この方法により、チャネルの機能を測定しながら膜上での集合・離散を蛍光色素などで観察することができる。特にこの方法では膜の曲率を変化させることができるので、チャネルのゲーティング状態と膜上空間分布の関係を明らかにすることができる。またチャネルの膜上のオリエンテーションを制御する方法を開発しつつあり、これを原子間力顕微鏡(AFM)で高分解能で観察している。一方、チャネルの膜上での動態は高速AFMを適用することにより、従来の観察よりはるかに時間分解能の高い動態を捉えられる。さらにチャネルの開ゲート状態におけるイオン透過特性の特徴を明らかにすることに成功し、論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
AFMの測定が高分解能になるにしたがって、さまざまな実験上の困難が現れてきた。しかしこの課題を解決することが本プロジェクトのブレークスルーにつながるはずであり、集中して実験を進める。これらの問題は基本的なリポソーム作成法や脂質平面膜法、さらにチャネル蛋白への変異導入などの基本的技術を組み合わせることによって解決の糸口をたどりつつある。本年度は平行して進めている技術的課題を克服し、新しい結果を得ることである。これによって来年度の統合的過程に進めることができる。
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