研究課題/領域番号 |
26253016
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷内 一彦 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50192787)
|
研究分担者 |
吉川 雄朗 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70506633)
|
研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2018-03-31
|
キーワード | ヒスタミン |
研究実績の概要 |
ヒスタミン・システムは1910年にDaleらによりその作用が見出されて以来現在まで多くの薬理学研究者の研究対象である。脳内ヒスタミンは神経伝達物質として機能しており、睡眠覚醒サイクルの制御や記憶・学習など様々な生理機能に関与している。平成28年度はヒスタミン代謝酵素であるhistamine N-methyltransferase(HNMT)欠損マウスの解析を更に進め、ヒスタミン系がヒスタミンH1受容体を介して睡眠覚醒サイクルを、ヒスタミンH2受容体を介して攻撃性を制御している事を明らかにした。今後は脳内の様々な部位に存在するヒスタミン系の中で、どの部位が睡眠覚醒サイクルや攻撃性の制御に寄与しているのかを明らかにしていきたいと考えている。またHNMTは脳内ヒスタミン系の制御機構として極めて重要であることから、HNMT作用を阻害する新規薬剤の探索的研究も併せて行った。 更に脳内ヒスタミン系の新たな制御機構としてヒスタミン輸送作用を有するplasma membrane monoamine transpoter(PMAT)に関する研究も行った。PMATを欠損するマウスを作製し、脳内のヒスタミン含有量を検討したところ、ヒスタミン代謝回転率がPMAT欠損マウスにて減少していることが明らかとなった。また細胞外のヒスタミン濃度を測定できるマイクロダイアリシス法を用いて視床下部周囲のヒスタミン濃度を測定したところ、PMAT欠損マウスにてヒスタミン濃度が増加傾向にあることがわかった。従って、PMATもヒスタミン系の制御に関わっている可能性が示された。今後PMATがマウスの行動などに対してどのような役割を果たしているかを明らかにしていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
histamine N-methyltransferase(HNMT)の機能解析 これまでの研究によりHNMTが睡眠覚醒サイクルや攻撃性の制御に重要な役割を果たしていることを明らかにした。今年度はHNMT KOマウスに対してヒスタミン受容体の拮抗薬を投与し、ヒスタミン濃度上昇がどの受容体の活性化を介して表現型の変化をもたらしているかについて検討を行った。その結果、HNMT KOマウスで見られた異常な睡眠覚醒サイクルはヒスタミンH1受容体の拮抗薬によって、攻撃性はヒスタミンH2受容体の拮抗薬によって、それぞれキャンセルされることが明らかとなった。 plasma membrane monoamine transpoter (PMAT)の機能解析 PMAT KOマウスの解析を行い、ヒスタミンの代謝回転率が脳内で低下していることが明らかとなった。また視床下部にてマイクロダイアリシスアッセイを行い、細胞外ヒスタミン量を測定したところ、PMAT KOマウスにおいて野生型マウスよりも上昇する蛍光が見られた。以上のことからヒスタミン濃度調節にPMATが寄与している可能性が示された。
|
今後の研究の推進方策 |
histamine N-methyltransferase (HJNMT)の機能解析 我々は新たにHNMT floxマウスを作製した。このマウスに対してcre recombinaseを局所的に発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV)を感染させる。その結果、脳内の一部分のみでヒスタミンが上昇したマウスを得ることが出来る。AAVを様々な場所に感染させることにより、脳内の各部位におけるヒスタミン系がどのような機能を有しているのかについて検討を行う。
plasma membrane monoamine transporter (PMAT)の機能解析 これまでにPMATがヒスタミン濃度調節に寄与している可能性を示す事が出来た。今年度は、野生型マウスとPMAT KOマウスとを比較し、その行動にどのような差があるのかについて検討を行う。
|