研究課題/領域番号 |
26253020
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 裕之 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30183825)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / DNAメチル化 / ヘテロクロマチン / 免疫不全 / 遺伝病 |
研究実績の概要 |
ICF症候群は、免疫不全、サテライトDNAの低メチル化、セントロメア部分のヘテロクロマチンの崩壊、顔貌異常を特徴とし、複数の原因遺伝子に起因する劣性(潜性)遺伝病である。原因遺伝子としてDNAメチル化酵素DNMT3B(1型ICF)と核内蛋白質ZBTB24(2型ICF)が同定されているが、これらの遺伝子に変異のない症例も多数ある。本研究ではエキソーム解析による新規原因遺伝子の探索、患者由来iPS細胞や変異細胞・マウスを用いたモデル系開発・レスキュー実験、プロテオミクス解析や遺伝学解析を駆使したサテライトDNAのメチル化制御ネットワーク解明を行い、ICF症候群の分子病態とヘテロクロマチン形成・維持機構の全体像を明らかにする。平成27年度は、網羅的なエキソーム解析により同定したCDCA7及びHELLSを新規原因遺伝子として特定することに成功し、共同研究者であるオランダLeiden大学van der Maarel博士、フランスParis Diderot大学Francastel博士らと共に研究成果を国際誌に発表した(3型及び4型ICF)(Nat. Commun. 2015)。また、作成したZBTB24ノックアウトマウスがヒトの2型ICF(ZBTB24の完全欠損)とは異なり致死であったため、死亡時期の特定などの詳細な表現型解析を行い、CDCA7ノックアウトマウスの作成を開始した。さらに、変異マウスの致死性のために詳細な機能解析ができない可能性を考慮し、ゲノム編集技術により培養細胞におけるノックアウトも行った。ZBTB24やCDCA7の関与するDNAメチル化制御ネットワークを解明するため、タグ付ZBTB24を培養細胞中で発現させ、IP-MS/MS法(プロテオミクス解析)により同定した相互作用タンパク質100個について、パスウェイ解析などにより検討を行った。尚、調整した核酸を評価・解析するためのマイクロチップ電気泳動装置を購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した3つの項目についてそれぞれ予定の計画を達成した。特に、第3の原因遺伝子を探すエキソーム解析では、第3のみならず第4の原因遺伝子の同定に至り、一流国際誌に研究成果を発表することができた。これにより90%以上のICF症例の確定診断が可能になった。また、ゲノム編集技術やプロテオミクス解析を用いた機能解析が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ZBTB24とCDCA7を含め既知の4原因遺伝子に変異のない2症例(国内1症例+フランス1症例)について、症例数の追加や海外研究機関の結果との比較等により、第5の原因遺伝子の同定を目指す。また、ZBTB24やCDCA7がどのようにサテライトDNAのメチル化を制御するのか、どのようにICF症候群の発症に関わるのか調べるため、ZBTB24とCDCA7をノックアウトした培養細胞や実験動物を作成して詳細な解析を行う。研究実績の概要に記載の通りZBTB24ノックアウトマウスは致死であり、現在着床前後に焦点を当てて表現型を解析している。致死ではなくサンプルが得られる変異マウス・細胞については、ゲノムワイドなDNAメチル化解析を行い、ヒトと同様な変化が見られるかどうか確認する。その後、遺伝子発現や染色体分配などへの影響を見る。また、プロテオミクス解析により同定したZBTB24相互作用タンパク質の詳細な研究を進め、パスウェイやネットワークの鍵と思われる因子があれば、ゲノム編集技術によるノックアウトなどを行い、サテライトDNAのメチル化制御ネットワークの解明を目指す。
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