研究課題
血球細胞のDNA二本鎖切断を検出するために、γH2AXあるいは53BP1の蛍光免疫染色法標本、微小核試験用標本を作成した。採血できない動物個体では、脾臓スタンプ標本を作成した。収集した標本と計測した放射能濃度の情報を紐付けしたアーカイブを作成し、保管している。原発の生物影響に関しての勉強会を開催した。ホットパーティクルの存否が問題となっているため、高放射能濃度の肺のオートラジオグラムを作成した。現在まで検出されず、EPMA検索まで至っていない。硬組織のストロンチウムは検出可能となった。ストロンチウムは土中に残留しているにも関わらず、ほんの一時期のみ汚染していることが分かった。アカネズミは地表を這っているので、β線も含めて被ばく量が大きい。アカネズミでは今までのところ、抹消血球ミトコンドリアDNAのDループ領域の変異は検出されていない。ウシでは血中ストレスマーカーに変化が検出され論文作成中である。3月31日時点で、浪江町、南相馬市より野生ニホンザル308頭の採材を行った。ウシの組織学的解析では、精原細胞から精子まで分化・発生異常は見当たらず、胎児では正常な精細管および精原細胞が確認された。被災ウシ精子を食肉処理場由来の卵子と体外受精した結果、受精率は正常値内であり、胚盤胞への発生も確認できた。現在、生殖細胞は、液体窒素にて凍結保存している。汚染稲わらを生後8ヶ月の肉用牛へ給与した。血中放射能濃度をモニタリングし、定常状態になるまで給与を続けた。汚染稲わら給与後、清浄飼料を血中放射能濃度が検出限界以下になるまで給与した。採血時にNaIサーベイメーターでネックの体外測定を行い、両者の相関から体外測定による血中放射能の推定技術について検討を行った。被ばく量の大きいトロトラスト症標本でエピジェネティック解析を試みたが標本が古く、標本の再包埋と整理をして解析に至適な標本を選ぶこととした。
1: 当初の計画以上に進展している
被災地での環境放射能濃度、放射線量は減衰と除染によって顕著に減少している。復興が着実に進んでいることになる。しかしこのためにフィールドワークの範囲も可能性も狭まっていることは確かであるが、考えられることは可及的に行ってきた。家畜についての採材は殺処分の終了とともに終わったため、野生動物の採材へ移行している。汚染稲わら給与試験も順調にたちあがり、予定以上の進行している。今後、分子病理学的解析を進める必要がある。霊長類であるサルにおける影響調査は極めて重要である。野生ニホンザルの採材は、予想を上回る数、質となっている。
長期内部被ばくによる経年的な変化を調べるために、引き続き被災動物の採材を行い、血球及びスタンプ標本とアーカイブの作成を継続する。同時に、アーカイブ試料の解析を継続し、線量と生物学的影響の相関を検討する。精巣で人工放射影物質の存在を確認する。歯と骨のストロンチウムの動態の異同、放射性ストロンチウムの濃度表示に分母をどうするか検討し論文作成する。ミトコンドリアDNA変異が蓄積する分裂しない骨格筋で変異を検討する。酸化ストレスマーカーについてウシ以外にも検討し、被ばくとの関係の普遍性を確認する。今後もサル検体の採材を続け、経時変化を検討する。特に血液細胞に留意する。体外受精した接合子を借り腹で産仔を得、遺伝子変異を解析する。汚染稲わら給与実験を継続し、血中放射能の変化を基準に、血中放射能濃度の上昇期、定常期、減衰期の3つに区分して解剖を行い、各時期における血中放射能、体外測定と各臓器、筋肉に蓄積する放射能濃度の相関を調べ、放射性セシウムの精密な動態解析を行う。引き続きトロトラスト症標本の整理・管理を行い、分子解析を始める。
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