肝臓は代謝や各種生体分子の合成機能の中心臓器であるとともに、腸管から外来物質や腸内細菌の菌体成分が流入する自然免疫系の前線基地でもある。代謝異常やウイルス感染、薬物等に起因する種々の肝障害により、炎症反応の惹起を伴って肝幹/前駆細胞の活性化を介した再生応答が誘導されるが、これが長期化・増悪化すると肝線維化、肝硬変、肝癌へとつながる。我々は、肝障害時における肝前駆細胞(LPC)活性化誘導因子としてFGF7を同定し、さらにその主要な産生細胞がThy1陽性間葉系細胞であることを既に見いだしていおり、これまでにこのThy1陽性細胞の解析を行ってきた。本研究は、肝障害における炎症反応から線維化に至る過程での各種肝臓構成細胞の動態とそれらの相互作用を解析することを目的としている。 そこで、Thy1陽性間葉系細胞の分離法を改良し、その性状解析を行った。Thy1陽性細胞よる肝線維化は肝障害モデルにより異なることを見いだした。肝臓の新たな可視化法の開発により、LPCを誘導する肝障害における胆管の詳細なリモデリングの様子を明らかにした。また、肝臓における炎症性のサイトカインの役割を解析から、Sema3eの肝線維化における機能を明らかにした。従来報告されてきたNK細胞とは異なる特徴的なNK細胞を見いだし、この細胞の解析を行った。さらに、Oncostatin Mの肝臓における過剰発現は肝障害を誘導することなく肝線維化を促進することを見いだし、これにより、肝線維化におけるマクロファージ、肝星細胞、肝類洞内皮細胞の相互作用の様子が明らかになった。
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