研究課題/領域番号 |
26253023
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮島 篤 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (50135232)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝障害 / 肝細胞 / 胆管 / 間葉系細胞 / サイトカイン / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
肝臓は代謝や各種生体分子の合成機能の中心臓器であるとともに、腸管から外来物質や腸内細菌の菌体成分が流入する自然免疫系の前線基地でもある。代謝異常やウイルス感染、薬物等に起因する種々の肝障害により、炎症反応の惹起を伴って肝幹/前駆細胞の活性化を介した再生応答が誘導されるが、これが長期化・増悪化すると肝線維化、肝硬変、肝癌へとつながる。我々は、肝障害時における肝前駆細胞(LPC)活性化誘導因子としてFGF7を同定し、さらにその主要な産生細胞がThy1陽性間葉系細胞であることを既に見いだしていおり、前年度までにこのThy1陽性細胞の解析を行ってきた。 本年度は、Thy1陽性間葉系細胞の分離法を改良し、その性状解析を行った。Thy1陽性細胞よる肝線維化は肝障害モデルにより異なることを見いだした。新たな可視化法の開発により、肝障害時における胆管の増殖を伴うリモデリングの詳細な様子が明らかになった。また、肝臓における炎症性のサイトカインの役割を解析から、IL-4の過剰発現により、従来報告されてきたNK細胞とは異なる特徴的なNK細胞が誘導されること、Oncostatin Mの肝臓における過剰発現は肝障害を誘導することなく肝線維化を促進することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代謝異常やウイルス感染、薬物等に起因する種々の肝障害により、炎症反応の惹起を伴って肝幹/前駆細胞(LPC)の活性化を介した再生応答が誘導されるが、これが長期化・増悪化すると肝線維化、肝硬変、肝癌へとつながる。本研究では、肝臓を構成する細胞間の相互作用という視点から、種々の病因による肝障害発症と再生の機構、および肝炎から肝線維化を経て発癌へと進行するメカニズムの解明を目指して研究を行っている。 FGF7がLPCの増殖を誘導し、その産生細胞として門脈域のThy1陽性細胞であることを見いだしていたが、さらにその細胞の起源や性状解析が進んだ。また、胆管の可視化という独自の技術を開発して、肝障害時における増殖を伴う胆管のリモデリングであることを示した。これは画期的な成果であり、肝臓の専門誌であるHepatologyに掲載されて、表紙を飾るとともに論文紹介されるなど高く評価されている。Oncostatin Mによる線維化モデルは炎症反応を伴わないために、線維化のプロセスの解析に適しており、細胞間の相互作用が明らかにされることが期待できる。肝臓でのIL-4の過剰発現により誘導されるNK細胞が見いだされているが、ユニークな性状を示しており興味深い。
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今後の研究の推進方策 |
肝障害時における肝前駆細胞(LPC)の活性化を伴う胆管増生は、胆管の増殖を伴うremodelingであることを細胞系譜解析と肝臓の3次元構造の可視化法により示してきたが、この後は胆管内の増殖性細胞の解析とともに胆管増生の生理的意義の解明を行う必要がある。また、Oncostatin Mの肝臓での過剰発現による新規肝線維化モデルを使い、細胞間相互作用など線維化機構の解析を行う。とりわけ、炎症・線維化の進行あるいは改善における単球マクロファージ、NK細胞や好中球の作用の検討が必要である。
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