研究課題
未だマラリアワクチンは実用化から遠く、唯一の第3相臨床試験虫のワクチン候補もその効果は十分ではなく、新規マラリアワクチン候補抗原の探索が吃緊の課題となっている。そこで本研究は、新規熱帯熱マラリア赤血球期ワクチン候補抗原の同定、それらの機能解析、および機能に立脚してワクチン効果を増強できる抗原の組合せを同定することにより、マラリアコンビネーションワクチン開発の基盤を確立することを目的とする。平成26年度に新たに確立した増感型赤血球結合アッセイ系と平成26年度に大幅に拡大した熱帯熱マラリア原虫メロゾイト特異的タンパク質セット142種類とを用いて、平成27年度は各組換えタンパク質の赤血球結合活性を測定した。その結果、陽性対照として用いている既知赤血球結合タンパク質Rh5の赤血球結合活性よりも強い結合を示すメロゾイトタンパク質を34種同定した。それらの内訳は、メロゾイト表面タンパク質に加えて、原虫の赤血球への侵入時に重要な役割を果たしていると予想されているメロゾイトの先端部小器官であるマイクロネーム及びロプトリータンパク質、さらに機能が全く知られていない熱帯熱マラリア原虫タンパク質も多数含まれていた。それらの中で、これまで我々が世界に先駆けてマラリアワクチン候補タンパク質として同定していた分子に着目して検討したところ、メロゾイト表面タンパク質MSPDBL1、ロプトリータンパク質RALP1、マイクロネームタンパク質GAMAがいずれもこのアッセイ系でRh5を上回るか同等の結合を示していた。したがって、本年度同定された赤血球結合タンパク質セットの中に、これら以外の新たなマラリアワクチン候補タンパク質が含まれている可能性が高いと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定よりも赤血球結合活性測定のタンパク質数を大幅に増加させたため、赤血球レセプターの性状解析までは着手できなかったが、赤血球結合タンパク質を34種類も同定することが出来たため、おおむね順調に進展していると考えられる。
これまで欧米で推進されてきた赤血球期マラリアワクチン臨床試験の失敗の経験から、赤血球期マラリアワクチン候補抗原探索における無視できない問題点として、抗原多型がクローズアップされてきた。つまり、その有無をワクチン候補探索の初期の段階で解析しておくことが、その後のワクチン開発の成果を左右する重要課題ということである。そこで平成28年度は、これまでに実施した各種抗体の赤血球侵入阻害活性、ならびに標的タンパク質の赤血球結合活性等の研究結果を総合して、比較的有望な新規ワクチン候補抗原を選択し、それらの抗原多型解析ならびにその多型がワクチン効果に及ぼす影響を解析することで、新規マラリアワクチン候補分子の選択を行う必要がある。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Vaccine
巻: 33 ページ: 1901-1908
10.1016/j.vaccine.2015.03.008
Parasitol Int
巻: 64 ページ: 60-63
10.1016/j.parint.2015.02.001
Infect Immun
巻: 83 ページ: 3083-3095
10.1128/IAI.03067-14
http://www.pros.ehime-u.ac.jp/malaria/