研究課題
本年度はコウモリゲノムに内在化しているボルナウイルス由来のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)遺伝子の解析を行った。Eptesicus Endogenous Bornavirus-like L 1(eEBLL-1)と名づけられた内在性遺伝子は、ボルナウイルスのL遺伝子とほぼ同じ長さの、5000塩基以上からなる巨大なオープンリーディングフレーム(ORF)を持っていた。進化学的解析により、eEBLL-1は1180万年以上前にEptesicus属コウモリのゲノムに内在化し、現代に至るまで巨大なORFを維持してきたことが明らかとなった。また、進化の過程においてeEBLL-1に自然選択が作用していることがわかり、機能的なタンパク質をコードしていることが示唆された。eEBLL-1のアミノ酸配列を解析すると、RdRp活性に必須の配列がすべて存在することがわかった。さらに、Eptesicus属コウモリの体内でeEBLL-1がmRNAとして転写されていることを実験的に証明した。これらのことから、eEBLL-1はEptesicus属コウモリにおいて機能的タンパク質をコードすることが強く示唆され、RdRpとして働く可能性が考えらた。哺乳動物はRdRpを持ってない。一方、植物等のゲノムはRdRpをコードしており、抗ウイルス機構や遺伝子発現調節機構において重要な役割を担っていることが報告されている。本研究は、哺乳動物がウイルスからRdRpを獲得したことを示唆する世界で初めての研究であり、哺乳動物とウイルスの共進化の解明する新たな手がかりになると期待された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Curr Opin Microbiol.
巻: 31 ページ: 176-183
10.1016/j.mib.2016.03.002.
Microbiol Immunol.
巻: 60 ページ: 437-441
doi: 10.1111/1348-0421.12385.
Sci Rep.
巻: 6 ページ: 25873
10.1038/srep25873.
巻: 6 ページ: 26154
10.1038/srep26154.
J Biol Chem.
巻: 291 ページ: 25789-25798.
10.1074/jbc.M116.746396
https://t.rnavirus.virus.kyoto-u.ac.jp/