研究実績の概要 |
樹状細胞(dendritic cell, DC)は、抗原提示脳に優れた従来型DC(cDC)と、核酸を認識して大量のI型インターフェロンを産生する形質細胞様DC(pDC)に分類される。昨年度までに、各々のDCサブセットだけを生み出すDC前駆細胞(common DC progenitor, CDP)を同定する目的で、pDCの分化・生存に必須の転写因子E2-2のレポーターマウス(E2-2-KuOrange)、pDC及び CD8+cDCの分化に重要な転写因子 IRF8のレポーターマウス(IRF8-Venus)を作製して解析を進めてきた。その結果、E2-2hi CDPは末梢二次リンパ組織においては大部分がcDCに分化するものの、腸粘膜関連リンパ組織では約4割が本来のpDCではなくcDCに分化することを見出した。本年度は、腸粘膜関連リンパ組織でDC分化の方向性が変化する分子基盤の解明を目指した。IL-3, IL-5, GM-CSFに共通な受容体beta鎖(bc)を欠損するE2-2レポーターマウスを作製し同様の実験を行ったところ、bc-/-E2-2hi CDPは末梢二次リンパ組織でだけでなく腸粘膜関連リンパ組織でも大部分がpDCに分化する傾向を示した。また腸粘膜関連リンパ組織にはbc関連サイトカインの発現が高いこと、さらにbc関連サイトカイン刺激によってE2-2の発現が低下することを確認した。これらの結果は、腸粘膜関連リンパ組織に高発現するbc関連サイトカインの影響を受けて、CDPあるいはpreDCでのE2-2発現が低下し、cDCへの分化が誘導されたことを示唆していた。現在、この現象の免疫学的的意義を追求しており、腸粘膜関連リンパ組織で分化転換したcDCにはレチノイン酸合成酵素が誘導されており、高い免疫寛容レベルが求められる同所における合目的転換である可能性が提示されている。
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