研究課題
本研究では、自己免疫病の免疫学的基盤の解明と新規治療法・予防法の確立にむけて、特に自己反応性T細胞の胸腺における産生機構、認識する自己抗原の同定、エフェクターTh細胞への分化機構について解析を行っている。本年度、TCR下流のシグナル伝達を減弱させる変異ZAP-70ノックインとTet-onシステムによりZAP-70の発現量を調節する2種類のマウスモデルを用いることにより、TCRシグナルの質的、量的変化による胸腺T細胞レパトア解析とT細胞の機能不全に与える影響を解析した。ZAP-70シグナル伝達を減弱させることにより、明らかなT細胞レパトアの偏移、自己反応性の獲得、自己免疫疾患惹起能を見いだした。また、ヒト免疫不全症候群を理解するためのモデルとなりうるZAP-70シグナル伝達強度と、胸腺でのT細胞発生不全の相関も見いだした。また、関節炎症部位から複数のT細胞クローンを分離・確立した。その後、関節滑膜細胞に反応するクローンを選択し、レトロジェニックマウスを作製することにより単クローンT細胞による自己免疫性関節炎モデルを確立した。さらに、この関節炎惹起性T細胞が認識する自己抗原がRPL23Aであることを同定した。RPL23Lは、様々な組織に発現が見られるとともに動物種間においても高く保存された分子である。ヒト関節リウマチ患者のRPL23Lに対する血清自己抗体を測定したところ、一部患者群に高い反応性があることを見いだし、臨床的にも非常に重要な知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、動物モデルの解析から自己免疫疾患患者の病態・病理の理解および治療法・予防法の確立を目的とする。本年度の成果、即ち、TCRシグナル強度の変化による自己免疫性T細胞産生と免疫不全症発症に関する良いモデルを提供できたと考える。また、臨床的にも重要な新規の自己抗体の発見は、今後、疾患バイオマーカーとしての応用が期待できる。
本研究課題では、引き続き、ZAP-70の質的・量的異常と特定のT細胞依存性自己免疫病の発症感受性スペクトラムについて分子生物学的、構造学的、免疫学的手法を用いて詳細な検討を行っていく。また、関節炎症部位に浸潤しているIL-17産生エフェクターTh細胞のTCRレパトア解析を行い、炎症局所に存在するエフェクターTh細胞の特異的な自己抗原認識機構、そして抗原特異的なエフェクターTh細胞を標的とした免疫制御の方法を探る。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 18件、 オープンアクセス 18件、 謝辞記載あり 18件) 学会発表 (26件) (うち招待講演 23件)
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