研究課題
本研究では、自己免疫病の免疫学的基盤の解明と新規治療法・予防法の確立にむけて、特に自己反応性T細胞の胸腺における産生機構、認識する自己抗原の同定、エフェクターTh細胞への分化機構について解析を行っている。本年度、26年度の研究計画を継続・発展させ、TCR下流のシグナル伝達分子ZAP-70を操作することによる自己免疫疾患モデルを確立した。特に、SKG変異に比べ強くZAP-70機能不全を起こす点変異ノックインマウスの解析を行った結果、胸腺において通常T細胞及び制御性T細胞の分化異常が見られること、自己免疫性関節炎のみならず劇症型腸炎を自然発症すること見いだした。その炎症組織中には自己抗原を認識した炎症性サイトカイン産生Th細胞が主要な細胞分画として認められ、自己免疫病の炎症病態を発現するためには非常に限定されたZAP-70機能の異常範囲が存在することが示唆された。即ち、TCRシグナルの集積された強さがその範囲に入ったときに初めて胸腺における自己反応性Th細胞の産生、末梢における活性化と炎症性Th細胞方向への分化が促進されるものと示唆された。最近、ZAP-70の変異がヒト自己免疫病患者からも同定された。今後、確立したマウスモデルの解析を通して、自己免疫疾患の病因および新規治療法開発につながる分子基盤の解明が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、動物モデルの解析から自己免疫疾患患者の病態・病理の理解および治療法・予防法の確立を目的とする。最近、ヒト自己免疫病患者のZAP-70変異が同定されたことから、本年度の成果であるZAP-70機能変化による自己免疫疾患のスペクトラム変化は、ヒト自己免疫疾患の病態理解に役立つモデル開発として重要な進展である。今後、病因因子の検証作業を進め、自己免疫性T細胞を標的とした分子機構の解明が期待できる。
本研究課題では、引き続き、ZAP-70の質的・量的異常と特定のT細胞依存性自己免疫病の発症感受性スペクトラムについて分子生物学的、構造学的、免疫学的手法を用いて詳細な検討を行っていく。特に、ZAP-70点変異に起因するZAP-70の構造的な安定性とゆらぎの分子モデリングを進める。また、自己免疫病スペクトラムの臓器特異的な疾患惹起性因子の同定と単一抗原の認識による複数の臓器特異的自己免疫疾患発症メカニズムの解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件)
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