研究実績の概要 |
(1) 再生医療等安全性確保法の課題抽出:①効果や安全性が検証されていない細胞治療の問題が指摘されて久しいが、患者受診の契機となるクリニックのWebサイトがどのような情報を提供しているのかは不明であった。現在、Webサイト情報は医療広告の規制対象ではないものの、2016年、厚生労働省はWebサイトの監査体制も強化する法改正の方針を示した。本研究で国内クリニックのWebサイト情報を分析したところ、現行の広告規制の対象がWebサイトに拡張された場合、広告として表示不可とされる「再生医療」の文言を使用するなど、8割以上のクリニックが取り締まりの対象になり得ることが示唆された。②前年度までの研究で、国内複数のクリニックが法で「高リスク」とされる臍帯血の投与をWebサイト上でうたっている実態が明らかになったが、その入手経路については不明であった。そこで今年度は、全国の産科医療機関を対象に臍帯血の取り扱いに関する現状調査を実施すべく、質問紙を作成・送付するところまで実施した。 (2) iPS細胞技術の倫理的課題に関する意識調査:①動物の胚にヒトiPS細胞を入れて動物胎内に戻すこと(動物性集合胚研究)認めるかどうかが国内外で議論されているが、世論の動向は明らかでない。そこで、一般市民520名とiPS細胞研究者105名に対する質問紙調査を実施したところ、8割以上の一般市民と9割以上の研究者が、ヒトiPS細胞を注入したヒト-ブタキメラ胚の作製を、6割以上の一般市民と8割以上の研究者が、ヒトのすい臓を持つヒト-ブタキメラ動物の作製を許容し得ることが明らかになった。②ヒトiPS細胞から作製した生殖細胞の受精を認めるかどうかが国内外で議論されているが、世論の動向は明らかでない。そこで一般市民約4,000名を対象に、当該研究の許容度を明らかにする質問紙を作成するところまで実施した。
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