研究課題/領域番号 |
26253036
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松浦 栄次 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20181688)
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研究分担者 |
保田 晋助 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00374231)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | β2-グリコプロテインI (β2GPI) / 変異 β2GPI-DV / 質量顕微鏡 / 血管新生 / 酸化脂質 / 酸化リポタンパク質 / LC-MS/MS / PET イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、β2-グリコプロテインI(β2GPI)の機能ドメインを用いた閉塞性血管病変の新規標的医療(Theranostics)技術の確立をめざしている。 β2GPIのドメインV(DV)のアミノ酸配列を基に、2つのリジン残基の置換による、3種類の変異型遺伝子組換えタンパク質を発現・精製し、それらの機能を検討した。2個のリジン残基を疎水性および酸性アミノ酸残基に置換することで、自己融解しなくなることが分かった。また、3種類の変異タンパク質His-DVの脂質への結合能をELISA法にて測定し、nativeリコンビナントDVと同様にリン脂質に結合能を有することを確認した。 β2GPIがスカベンジする酸化脂質のプロファイルを構築し、「脂質メタボロームによる体外診断法を確立する」という本研究のもう一つの目的のためには、酸化脂質の検出方法の確立が非常に重要である。我々は、血漿をHPLC法により分画した各リポタンパク質から酸化リポタンパク質に特異的結合性を示すβ2GPIに対する抗体(変性脂質関連の特異抗体)を用いて酸化リポタンパク質の検出を試み、血液中の病態特異的な酸化リポタンパク質の検出を確立した。現在までに、LC-MS/MSにより、β2GPIがスカベンジする酸化変性脂質のデータファイルが複数得られている。以上のように研究の進行状況は順調である。今年度は、LC-MS/MSにより検出される酸化脂質の種類を増やし、多種の酸化変性脂質(リピドーム)の一斉検出を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β2GPIの3種類の変異タンパク質は、2つのアミノ酸(リジン)残基の置換により、自己融解しなくなることが分かったので、大腸菌による大量発現および精製を続けている。突然変異を入れても、リン脂質への結合能は保持されていたので、DVの血管新生や線溶系に及ぼす生理機能の精査につながる可能性が高まった。 酸化脂質の検出方法が確立された。変性脂質関連の特異抗体を用いた血中酸化脂質の分画ができ、リポタンパク質のダイナミックな代謝動態の解析手段の一つになることが期待される。LC-MS/MS、MALDI-TOF-MSによる酸化脂質のデータベースを作り、β2GPIがスカベンジする酸化脂質のプロファイリングの構築に向かって解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
メタボロミクス(代謝物解析)は、質量分析技術の発展により、国内外の多くのグループから着目されている最先端技術であるが、その中でも、脂質代謝物(リピドーム)解析は必ずしも容易ではなく、当該研究者らの役割が極めて重要である。 これまでの検討で、β2GPIのDVに突然変異を入れても、リン脂質への結合能は保持されることが分かり、DVの機能である血管新生や線溶系の生理機能の精査を進める予定である。PETイメージングによる病態学的血管新生(癌、動脈硬化等)の診断への応用を可能にするための検討を行う予定である。 一方、特異抗体を用いることで脂質代謝異常を検出(診断)できる新規バイオマーカーの測定法をすでに確立しており、更に現在、当該抗体と、HPLCによる精製および検出との組み合わせにより、病態に関連するリポタンパク質を選択的に分画し、動脈硬化特異的な酸化脂質のプロファイルの作成を行っている。これらの成果に基づく新規の診断技術を確立する。 LC-MS/MSによる一斎解析技術の開発は、「theranostics」のテーラメード化にも必須である。病態に関わる酸化脂質の特定は、一般的には容易ではないが、当該研究者らの確立したバイオマーカー情報をもとに鑑別・標的認識が可能であると考えている。β2GPIがスカベンジ(捕捉)する酸化脂質のプロファイリングを行い、血中酸化脂質の解析する脂質代謝異常診断ツールの開発を目指す。
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