研究課題/領域番号 |
26253042
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
堤 明純 北里大学, 医学部, 教授 (10289366)
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研究分担者 |
川上 憲人 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90177650)
江口 尚 北里大学, 医学部, 助教 (50722146)
高橋 正也 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 作業条件適応研究グループ, 上席研究員 (70332400)
宮木 幸一 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 臨床疫学研究室長 (20327498)
井上 彰臣 産業医科大学, 付置研究所, 助教 (70619767)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ストレス / 労働者 / バイオマーカー / 遺伝子 / パネルデータ |
研究実績の概要 |
職場における健康診断の機会に、心理社会的要因と身体的指標の測定を毎年繰り返す大規模な労働者パネルの枠組みを活用して、労働者の健康指標に関するアウトカムデータを追跡し、職業性ストレスの健康影響を定量的に検証する。サブコホートにおいて有力なバイオマーカーを測定してデータを拡充し、職業性ストレスが健康影響を引き起こす過程を媒介・緩衝するメカニズムを検証することを目的とし、データの蓄積を行う。 それぞれの職場で取得した同意内容に基づいて、職場の健康管理データおよび郵送・ウェブの質問票を用いて、疾病休業を伴う健康関連事象を追跡した。企業側申し入れにより、再度、事業場内の調整と説明と同意の手続き、および、検査手続きの確認を取ることとなったため、遺伝子検査および睡眠・自律神経検査は平成27年度に実施することとし、代わりに平成26年度は、平成27年度以降に予定していた血清検査を実施した。 データの蓄積で可能となった前向きの解析では、心理的要因としてポジティブな要素である職場におけるソーシャルキャピタルの変化は精神障害の変化を予測すること、パネルデータの特性を活かした解析により、仕事のストレスと精神障害の関連は頑強であり、交絡要因によって説明しきれないこと、などを明らかにした。バイオロジカルなデータの解析も開始し、ワークエンゲイジメントがCRP上昇を抑える可能性を見出した。また、エピジェネティックな要因に関する解析では、うつ病と関連性のあるBDNFのメチレーションは、仕事のストレスとは関連が弱いことを明らかにした。 解析の過程で明らかになったバグを中心に適宜データクリーニングを行うとともに、新しく測定したバイオマーカーデータ、追跡により明らかになったアウトカムデータ(疾病休業)を追加して、データベースを整備、拡充しパネルデータとしての使い勝手の向上を図っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に予定していた遺伝子検査は、事業場の調整上の事由から健康診断に合わせて実施することができなかった。代わって平成26年度は、平成27年度以降の予定であった炎症系バイオマーカーの測定を実施した。睡眠時・自律神経検査は、複雑な手続きで多人数のデータ収集を行うため、少人数で実施が可能かを検討するフィージビリティテストを実施した。検査の諸手続きについては、事業場と確認が取れ、遺伝子検査と睡眠時・自律神経検査は平成27年度および平成28年度にかけて随時検査を実施することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子検査、睡眠時・自律神経検査の実施が事業場側の申し出で平成27年度以降の実施予定となったが、事業場とは調整が取れており、状況が整い次第順次実施予定である。引き続き、労働者の健康情報の追跡、炎症性バイオマーカーの測定を行い、データベースの拡充、整備を行っていく。 また、疫学分野のみならず、心理学、経済学、社会学からなる学際的な研究会を開催して、知見を広げる機会を設けるとともに、多角的な視点から、データ収集や解析のヒントを得て、成果に資するようにする。さらに、研究成果を一般に公開することに加え、将来、データをオープン化するために、ホームページを充実させていく。
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備考 |
上記URLにホームページを設置し、研究の概要と成果の発信を開始した。研究成果については、パンフレットを作成し、研究参加者をはじめ、一般向けにも分かる解説を加え、広く研究内容を発信するようにした。さらに、調査票(英語・日本語)、Q & A を含むデータ構造やデータクリーニングの過程の説明などを作成し、将来的なデータのオープン化の準備を開始した。
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