研究課題/領域番号 |
26253046
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
金子 周一 金沢大学, 医学系, 教授 (60185923)
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研究分担者 |
本多 政夫 金沢大学, 保健学系, 教授 (00272980)
井上 啓 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (50397832)
篁 俊成 金沢大学, 医学系, 教授 (00324111)
水腰 英四郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (90345611)
太田 嗣人 金沢大学, 先進予防医学研究センター, 准教授 (60397213)
御簾 博文 金沢大学, 医学系, 准教授 (80447680)
竹下 有美枝 金沢大学, 附属病院, 助教 (40507042)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム / 発現制御 / 肝臓 / 栄養 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
本研究は、過剰に摂取される栄養による全身への影響、とくに、過栄養によって肝臓の機能が大きく障害され、脂肪肝および脂肪性肝炎(NASH)になることを、遺伝子・タンパク・脂質の系統的な解析から明らかにし、その全身への影響と病態を研究している。世界に先駆けて、過栄養にある肝臓がSelenoprotein PとLect2というヘパトカインを産生することを報告してきた。Selenoprotein Pは肝臓および骨格筋のインスリン抵抗性を亢進させるだけでなく(Cell metabolism 2010)、骨格筋に働いて運動抵抗性を引き起こすことを明らかにした(Nature Med 2017)。これは運動療法による糖尿病の改善、脂肪肝の改善などの治療法を考える上で重要な事実を明らかにしたものである。また、もうひとつのLect2は、摂取する食事に対して迅速に反応することを示し(BBRC 2016)、Lect2が飽食センサーのひとつになりうることを示した。糖尿病の治療薬として広く使用されているDPP4の、脂肪肝への効果を明らかにした(Diabetes 2016)。Sirt2が糖取り込みに重要な役割を果たすこと(Nature Commun 2018)、グルコラファニンが褐色脂肪細胞を通して肥満とインスリン抵抗性を改善すること(Diabetes 2017)、エイコサペンタエン酸がSelenoprotein Pを低下させることを明らかにした(J Biol Chem 2017)。また、脂肪肝ではアルコールの関与が課題であり、低容量の場合、NAFLDではより発がんを低下させる可能性を明らかにした(ProS One 2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりの研究を実行することができている。予定した成果を論文とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかにしたヘパトカインであるSelenoprotein PおよびLect2を分泌する肝臓が、過栄養によって撹乱し、肝細胞が脂肪化し、内分泌器官として糖尿病、動脈硬化、がんと関連していることを示した。この新たな概念による肝臓病学の確立をさらにすすめる。筋肉、肝臓、脂肪組織におけるヘパトカインのレセプターおよびシグナル分子をそれぞれに示す。また、過栄養によって肝臓が撹乱し、ヘパトカインが分泌される機序を解明し、診断、予防および治療の標的となる分子を明らかにする。世界の成人における脂肪肝の罹患率は3割程度と考えられ、脂肪肝が肝硬変および肝細胞がんへと進展する比率は少ないものと考えられているが、脂肪肝そのものが心血管病変や発がんに及ぼす可能性が指摘されている。今後、さらに脂肪肝の研究をすすめ、新たな診断法および治療法の開発をめざす。
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