研究課題/領域番号 |
26253047
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹原 徹郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70335355)
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研究分担者 |
巽 智秀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20397699)
疋田 隼人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20623044)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / アポトーシス / Rubicon |
研究実績の概要 |
肝細胞株にパルミチン酸(PA)を投与すると、LC3-II及びP62蛋白の蓄積を認め、PAはオートファジー後期段階を抑制した。オートファゴソームとライソゾームの融合を負に制御するRubiconの蛋白量は増加した。またPA投与によりIRE1-JNK及びPERK-CHOP経路を含む小胞体(ER)ストレス蛋白の活性化を伴ってCaspase-3/7活性は上昇し、アポトーシスが誘導された。PA投与時にAtg7を抑制しオートファジーを強力に抑制するとアポトーシスは亢進した。更に、PA投与時にRubiconを抑制するとオートファジーの抑制は解除され、ERストレス蛋白活性化及びアポトーシスは抑制された。 野生型(WT)マウスに高脂肪食を投与すると、1ヶ月後から肝臓でRubicon発現増加を伴うオートファジー抑制を認めた。また、3ヶ月以降でERストレス蛋白活性化、肝細胞アポトーシス亢進及びALT値の上昇を認めた。高脂肪食を1ヶ月摂取させた遺伝子改変マウスに薬剤誘導にてAtg7遺伝子を欠損させオートファジーを抑制すると、肝細胞アポトーシスは亢進し、肝障害が増悪した。また、肝細胞特異的Rubicon欠損マウスを作成し高脂肪食を投与すると、4ヶ月の時点でも同腹のWTマウスに比して肝脂肪滴蓄積は減少しており、肝臓におけるオートファジー抑制及び小胞体ストレス応答は軽減し、肝細胞アポトーシスは抑制され、血清ALT値は有意に低下した。 以上より、過剰脂肪酸はRubicon発現を増加させてオートファジーを抑制し、ERストレス応答活性化を介して肝細胞アポトーシスを誘導した。脂肪酸の負荷に伴って上昇するRubiconによって、オートファジーが抑制され、非アルコール性脂肪肝炎の病態進展に寄与すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪酸の負荷はRubicon蛋白の発現増強を介してオートファジーを抑制することを明らかにした。またこのオートファジーの抑制は、肝細胞アポトーシスを誘導して非アルコール性脂肪肝炎の病態進展に関与する可能性も解明できた。非アルコール性脂肪肝炎に対してRubiconの機能抑制を標的としたオートファジー誘導が新規治療法となる可能性も示唆されており、本申請課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の結果をもとに以下の検討を行う。 1)高脂肪食モデルでのオートファジー抑制のメカニズムとその意義の検討 Rubiconノックアウトマウスに高脂肪食を負荷し、肝細胞アポトーシスや、肝細胞の脂肪滴の量、肝線維化及び肝発癌率などを検討する。また細胞株に高脂肪食を投与した際にRubicon蛋白が上昇するメカニズムを解明する。またRubiconがリン酸化されることを見出している、そのため昨年度に引き続き、Rubiconのリン酸化部位の同定とリン酸化の意義を検討する。 2)アポトーシスにおけるmitophagyの意義 肝細胞には単位細胞あたり約1,000個のミトコンドリアが存在する。アポトーシス誘導時にはmitochondrial outer membrane permeabilization(MOMP)が生じたミトコンドリアが蓄積し、これが一定の閾値を越えると細胞はアポトーシスを起こすと考えられる。また、上述の事象によりMOMPを生じたミトコンドリアは、内膜にpermeability transition pore(PTP)を形成しROSの産生源になり得ると考えられる。障害を受けたミトコンドリアはオートファジーの一種であるmitophagyにより処理されるが、アポトーシス亢進モデルにおいてmitophagyがどのような意義を持っているのかを解析する。 3)臨床試料を用いた解析 単純性脂肪肝および非アルコール性脂肪肝炎患者の肝生検組織、血清試料を用いて、アポトーシス・オートファジーの評価を関連遺伝子の発現、LC3-II/p62 Rubicon WB、Tunel染色、電子顕微鏡、CK-18 ELISA等にて評価する。
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