研究課題
本年度はまず、マウスから採取した初代培養肝細胞に対するPA投与を行い、本細胞においてもRuicon蛋白発現増加を伴うオートファジー抑制が生じることを確認した。次に、肝細胞特異的Rubicon欠損マウスに高脂肪食摂取をさせた際の脂肪滴蓄積軽減の機序を検討した。Rubicon欠損マウスはコントロールと比較して、脂肪酸トランスポーター、脂質合成酵素、脂質輸送、β酸化に関わる遺伝子発現には差を認めなかった。そこで肝組織の電子顕微鏡像を詳細に検討したところ、脂肪滴周囲を多数のオートファゴソームが取り囲み脂肪滴を分解する像が観察され、オートファジー亢進に伴う脂肪滴分解が生じている可能性が示唆された。また、本マウスは高脂肪食摂取により肝重量が低下する一方で内臓脂肪重量が有意に増加しており、肝臓において分解された脂肪滴内の脂質が肝外に放出され内臓脂肪蓄積に至っている可能性が示唆された。次に、PAによるRubiconの分解遅延機序につき検討した。まず肝細胞株にPAを投与した際のプロテオソーム活性を測定したところ、有意に減少していることがわかった。そこでプロテオソーム阻害剤であるMG132を肝細胞株に投与してRubicon蛋白の発現を見たところ時間依存的に発現増加を認めたが、PA投与時にはMG132を投与してもRubiconの増加が見られなかった。高脂肪食摂取マウスにおけるプロテオソーム活性も有意に抑制されていた。また、コントロールマウスではMG132によりRubiconの発現増加が見られたのに対し、高脂肪食群では増加が見られなかった。以上の結果から、Rubicon蛋白はプロテオソームによる分解を受けており、過剰脂肪酸がプロテオソーム活性を阻害することによりRubiconの蓄積増加の要因となっている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
肝細胞特異的Rubicon欠損マウスは高脂肪食摂取時にオートファジーによる肝内の脂肪滴分解を促進していることが解明された。また、高脂肪食摂取時のRubicon増加には脂肪酸によるプロテオソーム分解活性低下が関わっていることが判明した。脂肪肝に対する新規治療標的としての有用性を示しており、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
平成26-28年度の結果をもとに以下の検討を行う。1)Rubiconのリン酸化の機能的意義の解明昨年度に引き続き、マウスおよびヒトRubiconのリン酸化部位の同定とリン酸化の意義を検討する。パルミチン酸投与により変化するリン酸化部位を特定し、その部位をアラニンに置換した変異型Rubicon発現プラスミドを作成し、変異型Rubiconの分解速度、オートファジー抑制の程度、肝細胞株に対するアポトーシスやERストレスに与える影響を検討する。2)非アルコール性脂肪肝炎からの肝発癌へのRubiconの関与の検討昨年度に引き続き、肝細胞特異的Rubicon欠損マウスにおいてNASH肝癌が抑制されるかどうかを検討する。具体的には、高脂肪食摂取1年により生じる肝発癌と、STAMモデルにおける肝発癌における、癌の発生率および癌の進展率の差を検討する。
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Hepatology
巻: 64 ページ: 1994-2014
10.1002/hep.28820
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2016/20160913_1