研究課題
本研究は、心筋細胞の分化と破綻の過程における細胞個性転換の意義をエピゲノムの観点から捉えることにより、どのような因子がこの個性の変化を誘導し、維持しているかを明らかにし、将来の根本的な治療法の開発に繋げることが目的である。その基盤として、1細胞レベルのcharacterizationが必須と考え、平成26年度は心筋細胞の分化・破綻の過程におけるシングルセルレベルのトランスクリプトームを解析した。その結果、心筋細胞分化の過程においては、分化に伴って生じる遺伝子発現のhierarchyの存在を同定することに成功した。また1つの細胞の中に存在する遺伝子の転写ネットワークを複数存在し、それらが互いに連関している現象を見出した。さらにはそれを制御する分子を同定し、その細胞レベルの機能を実験的に証明することができた。また心筋細胞破綻の過程においては、圧負荷心不全マウスの心筋細胞を用いて解析することにより、遺伝子発現がこれまで考えられていた以上にheterogeneousであることを明らかにしただけでなく、心不全発症および維持に重要な細胞の分画を同定することに成功した。引き続き、心筋細胞の分化および破綻におけるエピゲノム解析に必要な細胞調整を行った。心筋細胞分化においてはエピゲノム情報を解析し、分化によって生じるエピゲノムダイナミクスに関わる因子を同定し、その機能を明らかにすることができた。心筋細胞破綻においても解析対象のサンプルを調整し、エピゲノム解析を行う準備を整えた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初は平成26年度にシングルセルレベルのトランスクリプトーム解析、エピゲノム解析まで進める予定であったが、心筋細胞分化においてはエピゲノム解析まで終了しただけでなく、当初平成27年度以降に行う予定であった「キー因子の同定」「キー因子の複合体解析」「キー因子の細胞レベルの機能解析」まで進めることができた。心筋細胞破綻のシングルセルトランスクリプトーム解析においては、生体サンプルを用いることもありやや難航したものの予定通りの解析を行うことができただけでなく、心不全の発症および維持に関わる重要な細胞の分画を同定することに成功した。さらにその分画の意義付けまで行うことができ、計画以上の成果を上げたと考えられる。細胞破綻のエピゲノム解析については、必要なサンプルおよび解析手法の準備が既に整っており、平成27年度に速やかに行う。以上より、当初の計画以上に進展している。
心筋細胞分化においては、エピゲノム改変に関わるキー因子を同定し、既にその因子の複合体解析および機能解析まで進めており、平成27年度はこれらをさらに進めていく。心筋細胞破綻においては1細胞レベルの遺伝子発現情報とエピゲノム情報を統合して解析し、エピゲノム変化と関連する因子を同定し、その機能解析を行っていく。
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