研究課題
本研究課題は、心筋細胞へと分化する心臓発生、心筋細胞の機能が破綻する心不全発症の両者において、細胞個性がどのように変化するかをエピゲノム解析により明らかにすることで、これを制御する方法の開発につなげることを目的としたものである。まず心筋細胞分化においては、マウスP19CL6細胞およびマウスES細胞の心筋細胞分化過程におけるエピゲノムのダイナミクスを解析した。その結果、分化に伴って活性化するWntシグナルの転写制御因子β-cateninが多能性転写因子と時期特異的に複合体を形成し、多数のエピゲノム改変因子と転写活性化複合体を形成すること、さらにはこの複合体が分化制御遺伝子を制御するエンハンサー領域に結合してエピゲノムを書き換えることが、心筋分化を制御していることを明らかにした。この結果は、再生医療に大きく貢献するだけでなく、普遍的な転写制御機構を明らかにしたものであり、ゲノム・エピゲノム異常が発症要因である癌の病態解明にも重要な基盤的知見である。また心不全発症過程において、横行大動脈縮窄術による圧負荷心不全モデルを用いて、トランスクリプトーム解析およびエピゲノム解析を組み合わせることにより、心筋細胞の肥大および破綻(不全心筋細胞化)に関わる転写制御状態を明らかにした。また肥大した心筋細胞が破綻へと至る上で重要な因子を同定し、その因子のノックアウトマウスを用いることにより、心筋細胞破綻における重要性を確認した。この結果は、終末分化した心筋細胞を転写状態により詳細に分類できること、さらにはその分類が臓器機能と良く関係していることを明らかにしたものであり、本知見は今後あらゆる疾患の病態解析研究に貢献することが期待される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 11件)
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