研究課題
腎臓はネフロン前駆細胞 (後腎間葉)、尿管芽、そしてその間を埋める間質の、主に3つの細胞集団の相互作用によって形成される。我々は発生過程を完全に模倣した5ステップの処理によって、マウスES細胞及びヒトiPS細胞からネフロン前駆細胞を誘導し、そこから立体構造をもった糸球体と尿細管を誘導することに成功した。そこで本計画は、幹細胞からさらに間質と尿管芽を誘導し、ネフロン前駆細胞と組みあわせて、腎臓の3次元構造を試験管内で再構築することを目的とする。1. 間質前駆細胞の機能と発現遺伝子の解析:間質は発生期腎臓の外縁部に位置するFoxd1陽性の前駆細胞から派生する。そこでFoxd1の遺伝子座にGFPをノックインしたマウスから、GFP陽性細胞をFACSで集め、マイクロアレイ解析を行った。既知の間質前駆細胞マーカーの一つとしてSall1を再確認し、Sall1の間質細胞特異的なノックアウトマウスを作成した。これによって間質がネフロン細胞の過剰な増幅を抑制していることが明らかとなり、間質でのSall1の標的を同定した。しかしノックアウトマウスの間質のマイクロアレイから、間質が予想以上に不均一な集団であること、発生時期によって前駆細胞の遺伝子発現プロファイルがかなり異なることが判明した。2. ポドサイトが蛍光発色するヒト糸球体の構築:糸球体ポドサイトで発現するネフリン遺伝子座にGFPをノックインしたヒトiPS細胞を樹立し、そこからポドサイトが光るヒト腎臓組織を作成した。誘導したヒトポドサイトはネフローゼ症候群の原因遺伝子などポドサイトに特徴的な遺伝子群を発現し、複雑な細胞突起を持っていた。さらにマウスへの移植によって、糸球体が血管につながり、足突起が複雑化した。ヒトiPS細胞由来の腎臓組織が血管と接続し、さらに成熟した初めての報告である。
3: やや遅れている
誘導すべき間質前駆細胞の時期と遺伝子発現がまだ確定していないため、ES細胞からの誘導が進んでいない。一方で尿管芽の誘導やヒトiPS細胞を用いた実験は順調に進んでいる。
不均一な間質の中のどれをES細胞から誘導するのかを決めるために、間質の起源をより正確に同定する必要がある。遺伝子改変マウスを使った詳細な解析を計画している。ヒトiPS細胞の方は移植実験を進めて、腎臓組織のさらなる成熟を目指す。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Journal of the American Society of Nephrology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1681/ASN.2015010096
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 15676
10.1038/srep15676
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/bunya_top/kidney_development/