研究実績の概要 |
多系統萎縮症発症の遺伝的要因としてCOQ2遺伝子を見出した.COQ2遺伝子がcoenzyme Q10 (CoQ10)の合成に必須の酵素をコードしており,本研究は,COQ2変異によってもたらされる病態機序をCoQ10の補充によって改善できるかどうかについて,ミトコンドリアの酸化的リン酸化機能を定量的に解析し,CoQ10の補充による臨床治験の感度の高いsurrogate markerを開発し,臨床治験の評価項目として応用することを目的としている.フラックスアナライザーを導入した.フラックスアナライザーは接着細胞での測定を行うため,酵母細胞を接着させることにより,測定を行い,最初に,酵母細胞の数を変化させ,測定されるOCRに直線性があることを確認した.この条件下で,多系統萎縮症発症リスクを高めるV393A変異,さらに家族性多系統萎縮症で病原性変異として見出されているM128V, primary CoQ10 deficiency の病原性変異であることが知られているS146N 変異について,解析を実施した.その結果,野生型COQ2:148.7 ± 12.6, V393A: 103.4 ± 17.6, S146N: 75.7 ± 14.6, M128V: 98.7 ± 24.7 pmol/minという測定結果が得られた.この結果より,V393A, M128Vを有するCOQ2活性が低下していることが確認できた.多系統萎縮症と比較して,より重症の臨床病型を示すprimaryCoQ10 deficiencyでは,COQ2活性の低下が,より著しく,genotype-phenotype correlationがあることが示され,フラックスアナライザーを用いて行う酵母のOCR測定の有用性を証明した.
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