アディポカインによる腸内細菌叢制御の生活習慣病における病態生理的意義の解明

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26253058
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 山内 敏正 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40372370)
• 研究期間 (年度): 2014-06-27 – 2017-03-31
• キーワード: 糖尿病 / 細菌 / シグナル伝達 / 脂質 / 食品

研究実績の概要

高脂肪食は全身で長期的な免疫・代謝の異常を基盤とした生活習慣病を惹起し、心血管疾患等を増加させ、寿命を短縮させる。我々は、代謝と免疫の両方の制御に重要なアディポネクチン受容体(AdipoR)欠損マウスの腸内細菌叢の無菌マウスへの移植が糖・脂質代謝異常、脂肪肝を発症させることを見出した。本研究では、高脂肪食により生活習慣病が発症するメカニズムを免疫細胞-実質細胞相互作用レベル、臓器連関レベルで、特に腸内細菌叢、腸内代謝産物に着目して、解明する。(1)高脂肪食、AdipoR欠損、合成・天然AdipoRアゴニストによる腸内細菌叢と腸内代謝産物の変化の解明：高脂肪食を負荷したマウス、AdipoR欠損マウス、野菜に含まれるが消化・吸収され難いオスモチンを投与したマウス、内服によっても血中濃度が十分に上昇する低分子量AdipoR活性化化合物を経口投与したマウスにおいて、腸内細菌叢と腸内代謝産物の変化を解析した。(2)腸管免疫細胞、腸管上皮細胞、内臓脂肪細胞等におけるAdipoRの病態生理的意義の解明：高脂肪食を負荷したマウス、AdipoR欠損マウス、野菜に含まれるが消化・吸収され難いオスモチンを投与したマウス、内服によっても血中濃度が十分に上昇する低分子量AdipoR活性化化合物を経口投与したマウスの、免疫細胞、上皮細胞、内臓脂肪細胞において、AdipoRやその細胞内シグナル伝達に関わる経路に加えて、酸化ストレスや炎症の制御に関わる経路に関して、解析を行った。(3)脂肪肝、NASH、心血管疾患の発症機構の解明：AdipoR欠損マウスの腸内細菌叢を移植された無菌マウスの、免疫細胞、上皮細胞、内臓脂肪細胞において、AdipoRやその細胞内シグナル伝達に関わる経路に加えて、細胞内ストレスの制御に関わる経路に関して、解析を行った。脂肪肝、NASH、動脈硬化が増加するかどうか解析を開始した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請時、予定していた研究項目(1)高脂肪食、AdipoR欠損、合成・天然AdipoRアゴニストによる腸内細菌叢と腸内代謝産物の変化の解明、(2)腸管免疫細胞、上皮細胞、内臓脂肪細胞等におけるAdipoRの病態生理的意義の解明、(3)脂肪肝、NASH、心血管疾患の発症機構の解明のうち、それぞれ平成２６年度に予定していた研究内容については、当初の計画通りに進展している。

今後の研究の推進方策

平成２６年度については、当初予定していた計画内容について、ほぼ達成した上、さらに当初の計画通りに進展している。そのため、本研究の推進において、研究体制及び研究計画に大幅な変更の必要性は低いと思われ、当初の計画通り、研究を推進する予定である。本研究課題のさらなる進展・加速を目指すべく、研究連携者を含めた各人の実験の精度とスピードアップをはかり、目的を早期に達成したいと考えている。

研究成果

• [雑誌論文] Genome-wide association meta-analysis identifies novel variants associated with fasting plasma glucose in East Asians. (2015)
  • 著者名/発表者名: Hwang JY, Sim X, Wu Y, Liang J, Tabara Y, Hu C, Hara K, Tam CH, Cai Q, Zhao Q, Jee S, Takeuchi F, Go MJ, Ong RT, Ohkubo T, Kim YJ, Zhang R, Yamauchi T, et al.
  • 雑誌名: Diabetes 巻: 64 ページ: 291-298
  • DOI: 10.2337/db14-0563
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Successfully achieving target weight loss influences subsequent maintenance of lower weight and dropout from treatment. (2015)
  • 著者名/発表者名: Yamada T, Hara K, Svensson AK, Shojima N, Hosoe J, Iwasaki M, Yamauchi T, Kadowaki T.
  • 雑誌名: Obesity (Silver Spring) 巻: 23 ページ: 183-191
  • DOI: 10.1002/oby.20874
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Expression, purification, crystallization, and preliminary X-ray crystallographic studies of the human adiponectin receptors, AdipoR1 and AdipoR2. (2015)
  • 著者名/発表者名: Tanabe H, Motoyama K, Ikeda M, Wakiyama M, Terada T, Ohsawa N, Hosaka T, Hato M, Fujii Y, Nakamura Y, Ogasawara S, Hino T, Murata T, Iwata S, Okada-Iwabu M, Iwabu M, Hirata K, Kawano Y, Yamamoto M, Kimura-Someya T, Shirouzu M, Yamauchi T, Kadowaki T, Yokoyama S.
  • 雑誌名: J Struct Funct Genomics. 巻: 16 ページ: 11-23
  • DOI: 10.1007/s10969-014-9192-z
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [学会発表] アディポネクチンup to date (2015)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正
  • 学会等名: 第49回糖尿病学の進歩
  • 発表場所: 岡山コンベンションセンター
  • 年月日: 2015-02-20 – 2015-02-20
  • 招待講演
• [学会発表] アディポネクチン受 容体の標的分子の探索と薬・食への活用 (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正
  • 学会等名: 第２回薬食国際カンファレンス
  • 発表場所: 日本平ホテル
  • 年月日: 2014-11-06 – 2014-11-06
  • 招待講演
• [学会発表] 肥満症治療新規薬物-AdipoRon を中心に- (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正
  • 学会等名: 第35回日本肥満学会
  • 発表場所: フェニックスシーガイアリゾート コンベンションセンター
  • 年月日: 2014-10-24 – 2014-10-24
  • 招待講演
• [学会発表] アディポネクチン受容体AdipoRの骨格筋における生理的・病態生理的意義の解明と治療への応用 (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正
  • 学会等名: 第87回日本生化学会大会
  • 発表場所: 国立京都国際会館
  • 年月日: 2014-10-07 – 2014-10-07
  • 招待講演
• [学会発表] 糖尿病と肥満症 (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正
  • 学会等名: 第29回日本糖尿病合併症学会
  • 発表場所: シェーンバッハ・サボー
  • 年月日: 2014-10-04 – 2014-10-04
  • 招待講演
• [学会発表] アディポネクチン受容体を標的にした健康長寿薬買う初への挑戦 (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正
  • 学会等名: 第19回アディポサイエンス・シンポジウム
  • 発表場所: 千里ライフサイエンスセンター
  • 年月日: 2014-08-23 – 2014-08-23
  • 招待講演
• [図書] DIABETES UPDATE (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正、岩部 美紀、岩部 真人、門脇 孝
  • 総ページ数: 3
  • 出版者: メディカルレビュー社
• [図書] 医学のあゆみ (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正
  • 総ページ数: 1
  • 出版者: 医歯薬出版
• [図書] 動脈硬化予防 (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正、門脇 孝
  • 総ページ数: 8
  • 出版者: メジカルビュー社
• [図書] 医学のあゆみ (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正、門脇 孝
  • 総ページ数: 6
  • 出版者: 医歯薬出版
• [図書] 細胞 (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正
  • 総ページ数: 3
  • 出版者: 北隆館
• [図書] Diabetes Journal (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正、門脇 孝
  • 総ページ数: 9
  • 出版者: 南江堂
• [図書] BIO Clinica (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内 敏正
  • 総ページ数: 5
  • 出版者: 北隆館