研究課題
マウスES細胞の膵臓分化を促進する化合物として、小胞型モノアミントランスポーターVMAT2 の阻害剤がヒットした。様々な解析により、VMAT2-モノアミンシグナルが膵臓β細胞への分化を抑制するシグナルであることが分かった。本研究において、マウスES細胞を用いたスクリーニング系で得られた化合物がヒトiPS細胞の膵臓分化にも効果があることを確認した。さらに、ヒトiPS細胞の分化誘導系の構築を行なった。ヒトiPS細胞の分化誘導系は、マウスよりも長く時間がかかり、約28日分化誘導後にインスリン陽性細胞が約8%程度得られた。各ステップの分化誘導条件を検討した結果、糖応答性インスリン分泌能を示す活性をもつ分化細胞を得ることが出来た。ヒトiPS細胞の分化誘導系においても同様に、VMAT2阻害剤がβ細胞分化を促進する効果があることを明らかにした。現在引き続きその作用機序について解析中である。一方、成体マウス膵島を用いた分散培養系において、膵β細胞の増殖再開が見られることを利用して、膵β細胞の増殖を促進する化合物のスクリーニング系を構築した。これを用いて、薬理作用が既知の化合物ライブラリーを加えて培養したときに、膵β細胞の増殖を促進する化合物のスクリーニングを行なった。ヒット化合物を得、その作用機序について解析を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
マウスES細胞を用いた評価系において、新たに分化誘導促進化合物を取得でき、その作用機序を解析することが出来た。また、マウスES細胞の分化誘導系のみでなく、ヒトiPS細胞の分化誘導系においても有効であったことが分かった。一方、成体マウスの膵島を用いた評価系も順調に進み、有効な膵β細胞増殖促進化合物を得ることが出来た。
マウスES細胞の分化誘導系を用いたスクリーニングで得られたVMAT2の作用を阻害するヒット化合物がヒトiPS細胞の分化促進する作用を持っていることが分かったため、今後はさらにマウスES細胞との類似性について詳細に検討し、詳細な作用機序を明らかにする。また成体マウス膵島を用いた評価系において、ヒット化合物がえられたため、その作用機序を詳細に解析することにより、成熟β細胞量を制御する機序を知ることが出来る。今後、ヒトiPS細胞から得られる膵β細胞の分化制御と機能維持に有効な制御方法の開発に有効な知見となる。
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