研究実績の概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)とその関連疾患は、血球形態の異常を伴った骨髄不全と急性骨髄性白血病への移行を特徴とし、高齢者に好発する慢性骨髄性腫瘍である。2011年、全エクソンシーケンスによる申請者らの研究によってRNAスプライシング因子の系統的な変異が、本症に特異的かつ高頻度(45-85%)に認められることが明らかにされ、本症の病態の解明に大きな突破口が開かれている(Yoshida et al., Nature. 2011)。そこで、本研究では、同研究成果およびこれに続く近年の申請者らの研究成果を踏まえて、RNAスプライシング因子の変異、および、それらと共存する遺伝子変異が、どのようにして(生物学的に、また遺伝学的に)造血幹細胞ないし前駆細胞クローンの選択と進化をもたらし、また造血環境と相互作用して、MDSの発症を誘導するのか、さらに、白血病への進展が生ずるのか、について、世界トップレベルのゲノム解析技術とマウスモデルを駆使した遺伝学的・機能的解析を通じて明らかすることにより、MDSの病態の理解とその克服に資することを目的とする。 26年度に予定していた研究のうち、「MDSにおける集団内多様性とクローン進化の解析」については、これまでに経時的な資料の解析を12症例について初診時を含めて52検体の全エクソン解析を行い、MDSの進行に関わっていると考えられる複数のドライバー遺伝子変異を同定し、またMDSの年余に渡る経過中にはクローン構造が大きく変化している症例が観察された。「変異RNAスプライシング因子の遺伝子標的の同定」については、これまでに50例のMDS患者由来RNA検体のRNAシークエンスを行い、SF3B1変異やSRSF2変異を持つ症例に特徴的なRNAスプライシング異常を同定している。「マウスモデルを用いた解析」については引き続き変異ノックインマウスを作成中である。
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