研究課題
1)自己炎症性疾患における低頻度モザイシズム症例の同定・新規原因遺伝子同定:遺伝子変異陰性ながら臨床的にTRAPSを疑った72症例において1%の検出限界の精度にて次世代シークエンサーを用いてモザイシズムの有無を検討したが、モザイシズム症例を見いだせす、CAPSとTRAPSとの間に大きな乖離を認めた。一方、モザイシズムを見出しえないCAPS症例において、新規遺伝子変異としてNLRC4変異を見出し、現在その病的責任変異としての確認を行っている。2)CAPS由来iPS細胞作製を用いた病態再現・病態解明:モザイシズムを有するCAPS症例よりiPS細胞を樹立し、軟骨病変の病態再現を行った。二次元での軟骨細胞の増殖促進、NOGマウスへの移植による三次元での軟骨細胞の増殖促進、及び疾患特異的軟骨組織構造変化を確認した。更に、軟骨細胞の増殖促進を惹起するシグナル分子の同定(PKA, CREB系)を行った。3)MKDにおける炎症病態解明:MKDにおけるインフラマソーム活性化機構は解明されていない。MKD由来iPS細胞から単球、マクロファージを作成し、IL-1b等のサイトカイン分泌について検討した。CAPS由来iPS細胞に由来する単球、マクロファージと異なり、MKD由来iPS細胞から分化させた単球、マクロファージにおいてはIL-1b等のサイトカイン分泌亢進を認めず、CAPSとは異なるインフラマソーム活性化機構の存在が示唆された。さらに、両疾患患者由来の血液細胞を用いた検討においても同様の結果を得ており、疾患iPS細胞を用いた病態再現の妥当性を確認した。今後MKD特異的なインフラマソ-ム活性化機構の解明がを進める。
2: おおむね順調に進展している
1)自己炎症性疾患における低頻度モザイシズム症例の同定・新規原因遺伝子同定:TRAPSにおけるモザイシズム症例がCAPS症例における頻度では存在しないことを明らかにした。また、CAPSにおける新規遺伝子変異(NLRP4)を同定し、機序解明に研究を進めている。一方で、1%の検出限界レベルでNLRP3遺伝子変異なしと診断されたすべての症例においてNLRC4の変異が同定されるわけではなく、あらたな原因遺伝子の検索が必要である。2)CAPS由来iPS細胞作製を用いた病態再現・病態解明:モザイシズムを有するCAPS症例より正常iPS細胞と疾患特異的iPS細胞を樹立し、軟骨病変の病態再現を行った。患者軟骨組織に認める三次元での構造変化をも再現することができ、今後CAPSにおける軟骨病態解明促進が期待できる状況にある。患者さんから軟骨細胞を頂くことはほとんど不可能であり、この成果は自己炎症性疾患特異的iPS細胞を用いた病態解明に大きな進歩が期待できる。3)MKDにおける炎症病態解明:MKDにおけるインフラマソーム活性化機構は解明されていない。当初の推測では、CMKD由来iPS細胞から誘導した単球、マクロファージにおいても、CAPS由来iPS細胞から誘導した単球、マクロファージ同様、IL-1b等の分泌亢進を認めるものとしていたが、あらたな視点からの検討を迫られることとなった。両疾患患者由来血液細胞を用いた検討においても同様の結果を得ており、CAPSとMKDにおけるインフラマソーム活性化機構には差異が存在することを示唆する結果である。4)新規の自己炎症性疾患として認知されつつあるinterferonopathyの代表的疾患であるAicardi-Goutieres syndromeについて、新規遺伝子IFIH1 (タンパク質MDA5)を同定し、機能解析を進めた。
1)CAPS症例において、1%の検出限界レベルでNLRP3遺伝子変異なしと診断されたすべての症例における新規の原因遺伝子の検索を継続する。2)CAPS疾患特異的iPS細胞に由来する軟骨病変の病態再現を進展させる。これまで研究により、軟骨細胞においてはNLRP3の発現を認めるものの、インフラマソームを構成する他の多くの分子の発現を認めない。従って、単球、マクロファージに於けるNLPR3分子シグナル伝達機構とは異なったメカニズムが存在することが推測される。この観点から、軟骨細胞においてNLPR3分子に直接会合する分子の同定を行う。軟骨細胞におけるNLPR3分子シグナル伝達機構を解明し、活性化NLRP3分子に対する制御する分子の同定を行い、創薬開発にも繋げる。3)MKD病態解明において、現在の理解の範囲では、iPS細胞由来の単一系統細胞の解析のみでは、病態再現は困難と推測する。今後は、モデル動物等を組み合わせた研究を進展させ、iPS細胞、個体を併せた視点からMKD病態解明を進める。4)自己炎症性疾患について症候視点から分子病態視点への転換を図るため、トランスクリプトソーム、メタボローム解析等を行い、自己炎症性疾患に特異的な炎症病態把握を行う。併せて診断・重症度・治療反応性の指標となるバイオマーカーを同定し、自然免疫制御逸脱に由来する炎症病態を明らかにする。5)新規の自己炎症性疾患として認知されつつあるinterferonopathyの代表的疾患であるAicardi-Goutieres syndromeについて、モデル動物、iPS細胞を用いて病態解明、治療基盤開発を行う。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Arthritis Rheumatol.
巻: 67 ページ: 302-314
10.1002/art.38912.