本研究では、家族性免疫不全症の原因遺伝子を連鎖解析および超高速DNAシークエンサーを用いたエクソーム解析により同定し、ヒト免疫疾患の発症に寄与する分子ネットワークおよびヒト免疫系の恒常性を維持する分子機構を明らかにすることを目標とした。まず、特定の微生物にのみ免疫応答ができない免疫不全症の家系おけるゲノム解析を実施した。本家系構造から、この症候群は常染色体優性遺伝形式で発症していると考えられる。エクソーム解析と連鎖解析によって6種類の候補変異を同定した。 1. 平成28年度には、6種類の同変異を持つ遺伝子改変マウスをCRISPR/Cas9の系を用いて樹立することに成功した。何れのストレインについても、C57BL/6のバックグラウンドを持つマウスを樹立した。6種類のマウスについては、ヘテロで維持をしているが、SPF環境下で飼育する限りは、特に明らかな外見の異常や病的な症状は観察できていない。また、脾臓細胞および胸腺細胞の大まかな細胞分画には大きな異常はないことを確認した。 2. 樹立したマウスについて、TLRをはじめとする免疫シグナルの変化を解析するための各種実験を実施した。特に、候補と考えられる一種類の変異を持つマウスについては、遺伝子欠損マウスも他の研究グループから供与していただき、樹状細胞応答、T細胞応答についての検討を行った。現在、6種類の全てのマウスについて、そのブドウ球菌感染モデルなどを用いて、特に個体レベルでの免疫応答を検討している段階である。
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