研究課題/領域番号 |
26253066
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉川 武男 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30249958)
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研究分担者 |
豊田 倫子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 客員研究員 (20392045)
前川 素子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (50435731)
大西 哲生 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 副チームリーダー (80373281)
豊島 学 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90582750)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 遺伝子 / 生理活性 |
研究実績の概要 |
硫化水素産生酵素には、MPST, CBS, CTHの3種類あるが、それぞれの組織でどの酵素遺伝子が重要な役割を担っているのかを知る一助として、デジタルPCR法によって遺伝子の絶対発現量を検討した。その結果、各組織における最も発現量の高い酵素遺伝子は以下のようであった:ヒト死後脳-CBS、ヒトiPS細胞-CBS、ヒトneurosphere-CBS、ヒト毛包-MPST、ヒトリンパ球-MPST、マウス前頭葉Mpst。これらの結果は、統合失調症由来組織で硫化水素産生系が亢進しているというこれまでの解釈と合致する。次に、硫化水素産生系の亢進が実際生化学的所見として検出できるか確認した。遊離の硫化水素は、H2S, H2Snとして存在していることが知られている。硫化水素産生系が亢進していると思われるC3系統マウス脳と、そうでないB6系統マウス脳で遊離硫化水素をモノブロモビマン-HPLC (必要時さらにLC-MS/MS)測定したところ、H2SnがC3脳で有意に上昇していた。また、貯蔵型イオウには、ミトコンドリアの呼吸鎖酵素に蓄えられたacid-labile sulfurと、タンパク質のシステイン残基に蓄えられたbound sulfane sulfurがある。C3脳ではbound sulfane sulfurが有意に上昇していた。これらの結果から、C3マウス脳ではB6マウス脳に比較して硫化水素酸系が亢進している事実が生化学的所見からも確かめられた。なお、上記の測定には大量の組織を必要とするため、ヒト由来サンプルでの測定は困難である。硫化水素産生酵素遺伝子の発現量の違いの原因を探るため、DNAメチル化解析を行った。その結果、マウス脳ではC3においてMpst gene bodyのメチル化亢進、ヒトneurosphereでは統合失調症由来サンプルでCBS gene bodyのメチル化亢進が比較的明瞭な所見であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫化水素産生系亢進のエビデンスが、遺伝子発現のレベルばかりでなく生化学的所見からも裏付けが取れたので、提案命題の信頼性が高まった。またそのメカニズムの1つとして、遺伝子のDNAメチル化という後成的要因があることをつきとめた。
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今後の研究の推進方策 |
より確かで直接的なエビデンスを得るためと、メカニズム解明研究のため、遺伝子改変マウスの作成をすでに開始したが、今後も継続する。
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