研究課題/領域番号 |
26253069
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川口 義弥 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (60359792)
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研究分担者 |
山田 泰広 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (70313872)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ES細胞 / 内胚葉 / 食道 / 胃 |
研究実績の概要 |
Sox9CreERT2マウス及びGATA4CreERT2マウスを用いたlineage tracing並びにHes1floxedマウスを用いたNotchシグナル不活化実験より、(1)発生過程での食道/胃の運命制御は、GATA4/Sox2共陽性領域からGATA4陽性領域が次第に肛門側に移動することでSox2陽性/GATA4陰性となった部分が食道になること、(2)食道―胃の運命決定の時期が、通常発生ではe7.5-e8.5の間のわずか1日で起こっていること、(3)当初想定していたNotchシグナルは食道―胃接合部の形成そのものには関与せず、食道扁平上皮の重層化に寄与することがわかった。実際、Sox2/GATA4ダブルレポーターES細胞を用いたin vitro分化誘導系での検証で、Sox2/GATA4共陽性細胞以降の分化誘導でSox2陽性細胞、Sox2/GATA4陽性細胞をFACS分取して培養すると、各々食道、胃オルガノイドとなること、更に、Sox2CreER;GATA4floxマウスを用いてe11.5にGATA4をKOすると胃内に異所性食道-胃接合部が形成されることから、上皮細胞の転写因子制御によって食道/胃への運命決定がなされることが確実となった。従って、食道-胃接合部の形成/位置決定機構は、可塑性を有するGATA4/Sox2共陽性細胞からGATA4が陰性化し、それが特定の部位で止まるメカニズムに依存していると考えられる。 実際の発生における食道-胃接合部の形成/位置決定は上皮細胞のGATA4陰性化部位で規定されるとすると、それを制御する間質細胞由来因子が想定される。そこで、in vitro実験で、Sox2陽性細胞あるいはSox2/GATA4陽性細胞のどちらかが生存できないシグナルを網羅的解析から抽出し、それをマウス発生で確認する作業を通じて、2つのシグナルを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以上の通り、可塑性を有するSox2/GATA4共陽性細胞が食道/胃への運命を決定し、定まった位置に食道-胃接合部が形成される過程には、上皮細胞のGATA4陰性化とそれぞれの細胞種の生存に適した周囲間質細胞からのシグナルが供給されることを見出している。現在、食道/胃への運命決定の後、上皮細胞が周囲の間質細胞を“教育”することで自らの生存に適したnicheを作り出すという新しい仮説の検証段階に入っている。 上記、重要な知見を得ており、当初の予想を超えた発生学上の新たな概念創出に向けた研究が進行している。研究立案時点で予定していた試験管内発がんモデルの作成と解析が遅れているが、最終年度に試験管内バレット上皮癌モデルの作成に挑む。全体的な達成度は概ね順調と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画 1)niche形成に関わるシグナルの確認:既にES細胞からの分化誘導実験から、食道/胃のどちらかの生存にのみ適したシグナルの抽出は終了している。そこで、Rainbow Mouseを用いて、GATA陽性/陰性それぞれの領域の上皮/間質細胞を採取し、RNA解析によって上記シグナル候補を確認し、Rainbow Mouse由来上皮細胞にそれぞれのシグナルを阻害するin vitro実験で、食道/胃への運命制御の変化を検討する。 2)異所性食道-胃接合部形成機構の解析:Sox2CreER;GATA4floxマウスで生じた胃内の異所性食道-胃接合部形成に関し、上記実験で示された食道特異的nicheが異所性食道-胃接合部に形成されているかどうか検証する。 3)食道-胃接合部を含むオルガノイドの作成:Rainbow Mouse 由来GATA4/Sox2共陽性を用い、上記実験で明らかになったnicheを培養皿上で再現することで、食道-胃接合部が任意の位置に形成されるかどうかを検証する。 4)試験管内バレット上皮がんモデルの作成:食道-胃接合部を含むオルガノイドに胆汁酸刺激を加え、バレット上皮が形成されるか否かを検討する。
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