研究課題
本研究は、完全埋込式完全人工心臓の実用化に向けて、螺旋流完全人工心臓を開発し、これに生理的血流量制御を適用して循環生理、病態生理、自律神経機能や運動負荷時の血行動態などを解析するとともに、体内埋込血圧センサーによる体内埋込制御システムやテーブル式圧流量推定方法などの計測制御系、ソフトな経皮的ワイヤレスエネルギー伝送システム(ソフトTETS)、新しいパーツなどの総合的な研究と開発を行うことを目的とする。昨年度の動物実験で、肝臓や腎臓に小さなチタンのデブリが沈着していることがわかり、原因は、血液ポンプのチタン製動圧軸受けが、サッキング時にセラミック製真円軸と接触して摩耗したと考えられた。そこで、動圧軸受けをチタン製からセラミック製に変更した。生理的制御方法に関しては、1/R制御が発散するヤギがまれにいることから、引き続き循環生理データの解析とシミュレーションを行い、1/R制御の発散現象の解析を行った。その結果、圧反射時定数および神経系伝達遅れが一定以上に早いヤギの場合、1/R制御が発散することがわかった。計測制御系に関しては、センサーレスの圧流量推定において、粘度が推定できれば、正確な圧流量推定が可能となる。その方法として、テーブル法を提案しているが、今年度は、テーブル法に改良を加え、急性動物実験により良い精度で圧流量推定ができることを確認した。ソフトTETSに関しては、コイルの性能を上げるために、さらに数種類のフィルムコイルを試作して基礎実験を行い、その中で最も伝送効率の良いコイルをシリコンバックに入れ、ヤギ皮下に埋め込んで動物実験を行った。新しいパーツに関しては、シリコーン樹脂を用いてカニューレとカフを試作した。さらに、シリコーン製カフに導電性シリコーンゴムを埋め込んで、カフの変形を電気変化として捉えることにより、サッキングセンサーとして作動するカフを開発した。
3: やや遅れている
本年度は、螺旋流完全人工心臓二次モデルの動圧軸受けの問題点を改善するためにセラミック製の動圧軸受けを製作し、それを組み込んだ新しい螺旋流完全人工心臓二次モデルを完成させ、新しい螺旋流完全人工心臓二次モデルを用いて動物実験を3回遂行した。動物実験では、人工心肺下に心室を切除し、同所性に螺旋流完全人工心臓二次モデルを埋め込んだが、3頭とも人工心肺に起因する合併症で1日以上の生存を得られなかった。今年度、動物実験での新たなデータが取得できなかったため、循環生理的な研究や生理的制御の研究に遅れが生じている。他は概ね順調に進展している。
今後は、螺旋流完全人工心臓二次モデルの動物実験を継続するとともに、体内埋込制御システム、生理的制御法、テーブル式圧流量推定法、体内埋込血圧センサー、ソフトTETSおよびシリコーンパーツの研究と開発を行い、循環生理、自律神経機能や運動負荷時の血行動態などを解析し、最終的に小型高性能かつ高耐久高機能な完全埋込式完全人工心臓を完成させ、実用化の目処をたてる。
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Journal of Artificial Organs
巻: 19 ページ: 219-25
DOI 10.1007/s10047-016-0898-5
http://www.bme.gr.jp