マウス骨髄細胞を用いて次世代シーケンサーによる解析を行った。破骨細胞分化前後の細胞で、H3K27acのヒストン修飾に対するChIP-seqを行うことにより、転写因子PU.1の重要性が再確認されたため、PU.1についてもChIP-seqを行った。PU.1結合領域に対するDe novoモチーフ解析を行うことにより、前破骨細胞においてはIRF8が、破骨細胞においてはNfatc1がPU.1と協調的に働いて転写制御を行っている可能性が強く示唆された。すでに行っていたNfatc1のChIP-seqに加え、IRF8についてもChIP-seqを行い、これらとPU.1の結合領域を統合的に解析した。これにより、細胞段階特異的なPU.1とIRF8、Nfatc1の協働的な役割が確認された。さらに、これらの転写因子が制御する遺伝子群の種類と発現量をGO解析、及びRNA-seqの結果に照らして解析したところ、それぞれ前破骨細胞及び破骨細胞に特異的な遺伝子を制御しており、各々の分化段階で発現が上昇していることが確認された。これらの遺伝子群において、遺伝子発現を制御するH3K4me3及びH3K27me3のヒストン修飾のChIP-seqの結果を用いて解析したところ、IRF8により制御され破骨細胞への分化に伴って発現の減少する遺伝子群では、プロモータ領域に発現抑制のヒストン修飾であるH3K27me3が増加していることが明らかとなった。以上より、破骨細胞の分化段階において、PU.1がパートナーとする転写因子をIRF8からNfatc1にスイッチし、これによりエピジェネティックな変化を介して分化段階特異的な遺伝子群の発現が制御されていることがゲノムワイドなレベルで明らかとなった。
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