研究課題/領域番号 |
26253077
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
植田 弘師 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (00145674)
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研究分担者 |
田中 義正 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (90280700)
松永 隼人 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (20437833)
水谷 龍明 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (50701843) [辞退]
水田 賢志 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (50717618)
内田 仁司 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (30549621)
永井 潤 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (20608369)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / リゾホスファチジン酸 / iPS細胞 / プライミング / 創薬スクリーニング |
研究実績の概要 |
本研究における本質的な研究課題は、代表者が発見した事実「リゾホスファチジン酸(LPA)が慢性疼痛の初発性原因分子である」について、生合成とその慢性疼痛における作用機構を明らかにすることである。今年度は、1)病態時LPA生合成におけるフィードフォーワード性自己増幅機構をLC-MSや質量顕微鏡により分子として定性的、定量的に検証することに成功した。2)また、自己増幅としての脊髄・脳内グリア細胞の関与については、FACS解析に成功し、アストロサイトやミクログリアに選択的に障害を与える薬剤ツールを用いてそれぞれの関与の証明に成功した。慢性疼痛病態モデルからの免疫担当細胞を正常動物に移入したときに同様に疼痛が惹起されることを見出しているが、中枢作用の関与については検討中である。3)責任細胞の一部を特定できたので、培養細胞、iPS細胞などにLPAをプライミングし、レスキュー機能検証する準備を行った。4)さらにはそれぞれの病態組織からLPA受容体遺伝子欠損マウスを用いたマイクロアレイ解析による特定遺伝子検証実験の準備ができた。5)フィードフォワード性疼痛増強およびLPA産生増幅機構に寄与するものと考えられる、LPA誘発性脱髄についても、in vitro解析できる細胞株を見出すに至り、細胞内シグナルと遺伝子発現制御レベルでの研究を行う準備を整えることができた。6)さらには、LPA産生増強による脊髄レベルでの疼痛増強機構の新たなメカニズムとして抑制性介在神経を興奮性に変換させる機能を持つ「KCC2の蛋白質発現低下機構」についての予備検討も行った。7)これらの仕組みを利用し、合理的で戦略的な創薬シーズを見出し、スクリーニング研究にまで発展させる、準備状況の一部ができ、それぞれに対する創薬研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)LPA生合成機構に関する課題で、最も難関の課題の一つである様々な慢性疼痛下のLPA産生について質量顕微鏡を用いて可視化する研究に成功したことが挙げられる。加えて、責任生合成酵素の分子同定に必要となる活性依存型プローブの合成に成功したことも重要な成果である。2)エンドカンナビノイド(eCBs)による制御についても、LC-MS/MSでの定量に成功し、eCBsとLPA間の生合成相互抑制作用を明らかにすることができた。3)LPA産生におけるグリア細胞の関与についてもFACS解析に成功し、アストロサイトやミクログリアに選択的に障害を与える薬剤ツールの効果検証にも成功した。4)慢性疼痛モデルマウスの免疫細胞の別マウスへの移入による疼痛惹起を確認できた。5)iPS細胞の入手先について、長所と短所の検討を行い、購入に向けての準備を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度はLPA生合成可視化、eCBsとの相互作用、グリア細胞の関与について前年度に得た重要な発見を定量的にあるいは論文として活用すべく完成する。さらに免疫系の関与、細胞移入等によるレスキュー研究に関しては、より重点的に研究推進を行い、少なくとも定性的な成果を目指す。
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