研究課題/領域番号 |
26253078
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 修 京都大学, 医学研究科, 教授 (90260611)
|
研究分担者 |
神波 大己 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20402836)
井上 貴博 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80511881)
根来 宏光 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (80708595)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | omics / 質量分析 / 前立腺癌 / 腎癌 / xenograft |
研究実績の概要 |
泌尿器癌の治療成績の向上には、個々の患者における癌の臨床的特徴を正確に診断し、個性に対応した治療戦略を立てることが必須である。泌尿器癌の中でも、前立腺癌と腎細胞癌ではキーシグナル経路とそれらを標的とした治療法が実践されているが、患者個々において治療反応性に差が存在し、薬剤に対する抵抗性の獲得が問題となっている。本研究ではこれまでに樹立した患者癌組織由来xenograftを用いて、次世代高感度質量分析装置によりxenograft内及び体液中の各種オーム解析を行い、癌の悪性度や治療抵抗性のキーとなる分子群を同定する。並行してヒト癌組織・血液・尿を用いて臨床的検証を補完し、これらの分子の新規治療標的及びバイオマーカーとしての応用可能性を検討する。 前立腺癌においては、我々が樹立に成功したxenograftモデルのうち、KUCaP3が腫瘍に嚢胞を伴うという特徴を示した。これを利用して嚢胞内容液と血清の蛋白を、高感度質量分析装置を用いて解析することで、バイオマーカー候補分子を抽出し、これを報告した(Yoshikawa et al. Prostate 2016)。また別の患者由来臨床検体から新たな系統のxenograftモデル作製にも成功しており、引き続き候補分子の検証を行っている。さらに去勢抵抗性獲得前後の組織を高感度質量分析装置で解析することで、去勢抵抗性に関わる脂質代謝プロファイリングを作成する。 腎癌においては、スニチニブに対する感受性の異なるKURC1-3を利用して網羅的マイクロアレイ解析を行い、スニチニブ耐性に関係する可能性のある分子としてIL13RA2などの候補分子を見出したという前年までの結果を受けて、スニチニブ以外の抗血管新生療法薬として、アキシチニブにおいても抵抗性獲得に関する候補分子を選定し強制発現株を作製した。今後機能解析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前立腺癌においては、KUCaP3の嚢胞液および血清の質量分析により抽出した候補分子について論文発表を行った。引き続き候補分子の機能解析を行っている。また、Xenograftの脂質代謝プロファイリングの作成に先立ち、細胞株の質量分析を行うことで安定して測定できる条件を設定できた。この結果から、細胞株においてもホルモン感受性の異なる株では脂質の発現に差を認めた。 腎細胞癌においては、スニチニブ抵抗性モデルの網羅的遺伝子解析から、標的分子の機能解析を行い、論文発表済である。また、アキシチニブ感受性モデル、耐性モデルの作成にも成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
前立腺癌においては、xenograftの検体で脂質の質量分析を順次行う。 腎癌においては、アキシチニブ耐性の候補分子の機能解析を行う。
|