研究課題
卵巣癌の組織型は多様でありそれぞれ異なる性質を示す。卵巣癌の中で、卵巣明細胞腺癌は本邦で頻度が高く、化学療法抵抗性で、卵巣の子宮内膜症性嚢胞という酸化ストレス環境下で発生するという特色がある。我々は、卵巣明細胞腺癌で高発現しているHNF1βが、癌細胞の糖取り込み亢進と酸化ストレス耐性、さらに化学療法抵抗性に関与していることを示した。このことから、卵巣明細胞癌において、HNF1βやその下流遺伝子を標的とする治療法が有用である可能性がある。卵巣癌の中で最も予後不良の組織型である卵巣高異型度漿液性腺癌は4つの遺伝子発現サブタイプに分けられることがThe Cancer Genome Atlas (TCGA)プロジェクトにより報告された。我々はそれぞれの遺伝子発現サブタイプと相関する病理組織細分類を樹立した。そしてこれらの病理組織細分類は化学療法感受性と関連することを見出した。また、これまで我々は、PD-L1/PD-1シグナルによる抗腫瘍免疫の抑制が、卵巣癌の進展をは、卵巣癌の進展を促進させることを示してきた。今回我々は、卵巣癌細胞におけるPD-L1発現の亢進は、特に腹膜播種巣において、T細胞由来のIFNgによりもたらされることを示した。また、抗がん剤投与によって、卵巣癌細胞におけるNF-kBシグナル経路が活性化し、それがPD-L1発現を亢進させることを見出した。このことから、抗がん剤と抗PD-1抗体の併用療法が卵巣癌において有望な治療戦略であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
卵巣癌のバイオマーカーおよび分子標的薬の研究において、多くの成果をあげて、多数の論文で発表することができた。
今後もこれまでと同様に研究を進めていく。高異型度漿液性腺癌の病理組織細分類とタキサン感受性の関連については、我々はJGOG3016-A1試験を行っており、JGOG3016試験に登録した症例を集積しつつある。現在のところ、症例集積は150例を超えており、集積終了予定時期である平成28年9月末には250例に到達する見込みである。この研究により、パクリタキセル投与量の多いdose-dense TC療法が、タキサン感受性を示すと予想されるMesenchymal Transitionタイプで有用か否かを検証することができる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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