研究課題/領域番号 |
26253085
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
野田 政樹 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50231725)
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研究分担者 |
江面 陽一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50333456)
早田 匡芳 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (40420252)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨芽細胞 / 骨形成 / メカニカルストレス / 副甲状腺ホルモン |
研究実績の概要 |
本研究では、骨形成の統合的メカニカルシグナル制御ネットワークの新分子機構の解析を推進した。我国においては高齢化がこれまでにないスピードで進行しており、その結果、重度の骨粗鬆症を伴う患者における歯科インプラントの際の「骨量不足」およびがん患者の増加に伴う口腔がん切除後の顎骨の広範囲骨欠損ならびに他臓器のがんの骨転移切除後の骨の再構築、歯周疾患による歯槽骨喪失および外傷性の広範囲骨欠損への対応の上で「骨の形成を基盤とする治療」の確立は急務である。現在骨形成のシグナルとしては メカニカルストレスと副甲状腺ホルモンのシグナルが存在するがそのいずれにおいてもメカニズムが十分には明らかではないことから、Fucciシステム(Fluorescence Cell Cycle Indicator)で、G1のCell Cycleにある骨芽細胞を蛍光色素で赤く標識し、またG2Mにある骨芽細胞を緑に標識し、その上でこれらの細胞へのメカニカルストレスを印加し、同時または単独で副甲状腺ホルモンに細胞を暴露することにより 細胞周期ならびに細胞の運動への二つの骨形成シグナルの作用を解析した。その結果、G1期においてもS/G2/M期においても骨芽細胞は遊走することを示した。また、S/G2/M期の細胞はG1期の細胞よりも早く遊走した。興味深いことに骨形成促進作用をもつ副甲状腺ホルモンは遊走速度を高め、もうひとつの骨形成促進因子であるメカニカルストレス(MS)も同様であった。これに対して両者併用では、骨芽細胞の遊走速度は対照レベルに抑えられ、二つの骨形成促進性刺激の間に交絡のあることが示された。以上の結果は骨芽細胞の遊走は細胞周期と連関して機械的刺激と化学的刺激の両者によって協調的に制御されることで骨量制御に寄与することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator (FUCCI)は蛍光標識により細胞周期を可視化するシステムですが、私たちはFUCCIトランスジェニックマウスの新生児から骨芽細胞を単離することで、初期骨芽細胞における細胞周期と細胞遊走の連関を同時に観察することに成功した。これにより、骨芽細胞ではS/G2/M期の細胞はG1期の細胞よりも早く遊走し、また、骨形成促進作用を持つ副甲状腺ホルモン(PTH)やメカニカルスロレスが骨芽細胞の遊走速度を高めることを明らかにした。さらに、驚くべき事に、これらを併用した場合には遊走速度が対照レベルに留まることから、骨芽細胞の遊走は細胞周期と連関しており、これは骨形成増加に寄与する機械的刺激と化学的刺激の両者によって協調的に制御されることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
骨粗鬆症は、 本邦ではおよそ1200万人に影響を及ぼしている非常に多くの患者の存在する疾患でありながら、適切な骨形成の機構はなお明らかではなくこれに必須である骨芽細胞の細胞周期の変化と遊走との動的関連性については技術的な困難さから解明されていなかった。今回の細胞レベルでの解析の成功に基づきさらにメカニカルストレスと副甲状腺ホルモンによる骨形成の新たなメカニズムを骨形成の統合的メカニカルシグナル制御ネットワークの新分子機構を中核に解明する。特にアドレナリン受容体の副甲状腺ホルモンによるクロス制御、BMP(骨形成因子)の作用へのイソプロテレノールの制御、BMPによる作用への新規の制御機構を明らかにする。
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