研究実績の概要 |
本研究は、口腔扁平上皮癌、悪性黒色腫などの細胞株を用いて、原発巣からの癌細胞の遊離メカニズムを解明することを目的とする。具体的には、βcateninを中心とした複数の細胞接着機構であるHTR2C-Lin7C-CASK-βcatenin-cadherin カスケード制御、βcatenin リン酸化阻害によるWnt経路制御、Wnt-βcatenin-target genes ( MMP 等)カスケード制御の3経路について検討し、原発巣からの癌細胞の遊離メカニズムを総合的にとらえ、俯瞰的に解明するとともに、転移抑制薬剤の開発を前臨床試験まで行う。臨床サンプルで各経路の特異的発現状態と頸部リンパ節転移との強い相関を明らかにした。口腔扁平上皮癌、悪性黒色腫の細胞株について、各制御遺伝子(HTR2C, GAD1, ALY)の形質転換細胞を作製した。mRNAおよびタンパクの発現、転移能の機能解析を行い、HTR2Cの発現抑制は接着機能、GAD1はβcatenin のリン酸化促進、ALYはCD82の発現制御に関与し、遊走能、浸潤能の制御に有意に関与していることを明らかにした。各遺伝子における転移機構の相互作用を評価するため、口腔扁平上皮癌、悪性黒色腫の形質転換細胞を用いて、target遺伝子および関連遺伝子群(MMP2、MMP7、MMP9、WNT5A、α-catenin、e-cadherin、myc、junction plakoglobin、desmoplakin、desmocollin2、desmocollin3、plakophillin、β-catenin、CD82、CD44、PPARδ)の発現をreal time PCR 法で解析したところ、Wnt5AおよびCD82を起点とした転移能の制御が行われている可能性が示唆された。今後は、悪性黒色腫細胞株3種類を追加し計5種類(colo679, G361, A2058, GAK, HMY-1)の悪性黒色腫細胞株と、OSCC細胞株2種類(HSC-3, KOSC-2)に 肺腺癌細胞株3種類(A549, PC9, HCC827)を追加して癌転移実験の評価を行いさらに、同定した阻害剤をもちいてin vitro、in vivoにおいて癌転移機構を解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた研究計画については、おおむね順調に達成できた。本年度の研究計画で予定していた口腔扁平上皮癌、悪性黒色腫の細胞株について、各制御遺伝子(HTR2C, GAD1, ALY)の形質転換細胞を作製した。その細胞株を用い、各遺伝子における転移機構の相互作用を評価するため、口腔扁平上皮癌、悪性黒色腫の形質転換細胞を用いて、target遺伝子および関連遺伝子群の発現をreal time PCR 法で解析した。これまでの研究成果は、次年度以降の研究計画に大きく寄与できる結果であり、本年度の実績としては順調である。
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