研究課題/領域番号 |
26253092
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福本 敏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30264253)
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研究分担者 |
保住 建太郎 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (10453804)
江草 宏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30379078)
齋藤 正寛 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (40215562)
齋藤 幹 東北大学, 大学病院, 講師 (40380852)
阪井 丘芳 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90379082)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発生医学 / 歯学 / 毛 / エナメル質 |
研究実績の概要 |
歯は口腔内にしか生じず、皮膚には生じない。その一方で毛は皮膚より発生するが、口腔内には生じない。この基本原理に関して、その分子メカニズムは不明であった。これまで我々の研究グループでは、歯および毛の上皮細胞の分化スイッチを明らかにすルモク的で分子スクリーニングを行った結果、Sox21などの新たな転写因子等の同定に成功した。本分子の歯胚での発現や、遺伝子欠損マウスの解析から、Sox21が存在しない状況では、歯原性上皮より毛を生じる事を見いだしていた。そこで、なぜSox21が存在しないと、エナメル上皮でなく毛に分化するのかを明らかにする事を目的に研究を実施した。 歯原性上皮が毛の細胞に分化する為には、上皮ー間葉相互作用により、相互刺激が必要であるが、S0x21を欠損したマウスにおいては、上皮組織のみから毛が誘導されていた。したがって下記の2つの仮説を考えて実験計画を立案した。1つはこれまでの概念とは全く異なったメカニズムで、上皮ー間葉相互作用を必要としない毛への分化、2つめは上皮細胞から間葉細胞が誘導される上皮間葉転換(EMT)が部分的に生じ、その結果微小環境において上皮ー間葉相互作用が行なわれた可能性である。両者を想定した研究を実施した結果、Sox21の発現を失った上皮細胞が毛へと分化した理由は、後者であることを発見した。つまり、陥入した口腔上皮細胞は通常Sox21を発現し、アメンロジェニンやアメロブラスチンなどのエナメル芽細胞分化に必要な分子群を誘導するが、Sox21を欠損すると、これらの分子発現が減少し、上皮細胞の一部が間葉細胞(毛乳頭)に転換する。この新たに形成された毛乳頭により毛が誘導される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで上皮細胞から毛や歯への分化メカニズムは全く分かっていなかったが、Sox21の同定によりその分子機能が明らかとなった。特に今年度は、Sox21が毛乳頭形成に関わる分子機能について詳細に解明することができ、この分子機構が癌の転移などにも極めて密接に関わっている事が明らかとなった。つまり特定の器官の発生メカニズムのみならず、癌などの疾患発症に関わる基本原理を見いだすことができたことが、当初の計画以上に研究が進展した理由である。
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今後の研究の推進方策 |
Sox21を介した歯および毛の発生のスイッチ機構に関しては、海外の一流誌への投稿を行う。またSox21遺伝子欠損と同様の表現系を示す他の分子の同定にも成功している事から、Sox21で同定された分子機能との関連性などを比較しながら研究を進める事で、新たな歯および毛の発生のスイッチ機構をより詳細に解明する。また、歯や毛のみならず、唾液腺や涙腺の発生機構、肝臓や腎臓の発生機構など、上皮あるいは内皮が陥入する組織についても、同様の分子スクリーニングを行い、広く器官発生のスイッチ機構の解明に取り組む予定である。
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