研究課題
上皮陥入組織における運命決定機構を明らかにする目的で、「なぜ口腔内に毛は生えないのか?、なぜ歯は皮膚に生えないのか?」という発想から、口腔上皮と皮膚、さらには歯胚等の組織を用いた包括的な遺伝子スクリーニングから、歯や毛の器官決定に関わる分子群の同定に成功した。その中で、Sox21はエナメル上皮に発現し、その遺伝子欠損マウスにおいて、口腔内で陥入した上皮組織から本来はエナメル質を形成する細胞に分化するが、毛を生じることを見出した。このSox21がエナメル上皮の分化に重要であることは、昨年度までの研究で明らかにしたが、何故毛に分化するのかは不明であった。そこで、歯原性上皮細胞において、Sox21の発現抑制を行なったところ、エナメル芽細胞分化マーカーの発現が減少し、毛のマーカであるケラチン分子群の発現上昇が認められた。さらに、上皮細胞の細胞間結合の維持に重要であるE-cadherinの発現減少を認めた。そこで、Sox21欠損マウスの組織や、Sox21過剰発現細胞、発現抑制細胞における遺伝子発現を検討した結果、Sox21がAnapc10と呼ばれる蛋白分解に関わる分子認識因子の発現を直接制御していることが明らかとなった。Anapc10は、エナメル基質の発現に関わるとともに、上皮細胞が間葉細胞に変化する上皮間葉転換の抑制に寄与していることが明らかとなった。これらの結果から、Sox21が欠損した状態では、Anapc10の発現が減少し、上皮間葉転換が促進されることで毛乳頭に類似した組織が形成され、毛が生じた可能性が示唆された。これらの分子メカニズムをより詳細に検討することで、単一上皮から毛や歯の誘導を人為的にコントロールすることが可能となり、これらの知見をもとに再生医療技術の発展に貢献するものと考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
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