研究課題/領域番号 |
26253094
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
天野 敦雄 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (50193024)
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研究分担者 |
久保庭 雅恵 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00303983)
小島 美樹 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20263303)
竹内 洋輝 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 特任助教 (40572186)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2018-03-31
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キーワード | 歯周病 / バイオフィルム / 細胞内侵入 / 生活習慣 / メタボローム研究 |
研究実績の概要 |
プロジェクト① バイオフィルム総体の病原性を評価する因子の特定(感染要因指標):口腔常在菌Streptococcus gordoniiのアルギニン-オルニチンアンチポーターであるArcDの更なる機能解析を進め、ArcDを介したオルニチン排出が、混合菌種バイオフイルム形成に中心的役割を果たす仲介菌Fusobacterium nucleatumとS. gordoniiの相互作用のみならず、S. gordonii菌体内のアルギニン代謝調節にも重要な役割を果たすことを明らかにした。 プロジェクト② 歯周病に「なる人」と「ならない人」を決定づける宿主遺伝子多型の同定(宿主要因指標):初期エンドソームとゴルジ体間の輸送に関与するRab GTPase、特にRab14、Rab22、Rab30、Rab31 につき、蛍光蛋白質Enhanced Green Fluorescent Protein との融合蛋白質を歯肉上皮細胞に発現させ、P. gingivalis との共局在を調べた。その結果、感染後1 時間においてRab14 が本菌と顕著な共局在を示し、主に初期エンドソームのマーカーであるEGFP-2xFYVE とも共局在を示したが、後期エンドソームに特異的に存在するRab7A とはほとんど共局在を示さなかった。このことより、初期エンドソームに存在するP. gingivalis の輸送にRab14 が関与することが示唆された。 プロジェクト③ 生活習慣・全身疾患からの歯周炎リスク評価(環境要因指標):事業所健診データ(約12,000人)にもとづき、42歳時と46歳時の同一受診者の経年データを連結した縦断研究を実施した。その結果、肥満者ではう蝕を放置し安くう蝕の治療放置者では治療完了者と比較して、メタボリックシンドロームとそのリスクである肥満・高血圧・脂質異常・高血糖の有病率が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つのプロジェクトよりなる本研究は、全てのプロジェクトにおいても、当初計画通りに進捗し、論文業績に繋がる成果を上げているため。 プロジェクト① バイオフィルム総体の病原性を評価する因子の特定(感染要因指標) プロジェクト② 歯周病に「なる人」と「ならない人」を決定づける宿主遺伝子多型の同定(宿主要因指標) プロジェクト③ 生活習慣・全身疾患からの歯周炎リスク評価(環境要因指標)
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、3つのプロジェクトを並行して進めていく。 プロジェクト①:S. gordonii 共培養下のF. nucleatumが培養上清中に特異的に排出する代謝物質について、メタボローム解析を用いた検討を進める。これにより、バイオフイルムが歯周病原性を高めていく過程の中盤で、仲介菌F. nucleatumがどのような代謝物質を排出することにより歯周病菌に代表される後期付着菌群との相互間関係を構築していくのかを検討する。また、得られた結果により、唾液メタボローム解析によって得られた知見を検証する。 プロジェクト②:平成28 年度の予定は、ヒト歯肉上皮細胞に侵入したP. gingivalis に対するRab14 の影響を調べる。これまでの研究により、繊維芽細胞増殖因子のゴルジ体からエンドソームへの順行輸送の制御に、Rab14 に結合するキネシン-3 が重要であることが報告されている。また、Rab14 はRab4A やRUFY1 とともに、トランスフェリン受容体のエンドソームから細胞膜へのリサイクリング経路に関与することが報告されている。このことより、P. gingivalis がRab14 を通じ積極的にエンドソームの順行輸送を制御している可能性が考えられる。そこで、Rab14 に対するshRNA の安定発現株、またはsiRNA による一過性のノックダウンにより、歯肉上皮細胞に侵入したP. gingivalis の細胞内動態の変化を共焦点顕微鏡で調べる。また、P. gingivalis のどの病原因子がRab14 のゴルジ体からエンドソームへの輸送に関与するか、本菌の変異株を用い調べる。 プロジェクト③:国立循環器病センターの吹田研究に参画し、生活習慣・全身疾患からの歯周炎リスク評価のための疫学調査を実施する。
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