研究課題/領域番号 |
26257013
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
池谷 和信 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 教授 (10211723)
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研究分担者 |
高井 康弘 大谷大学, 文学部, 教授 (00216607)
篠田 隆 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (20187371)
渡辺 和之 阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (40469185)
中辻 享 甲南大学, 文学部, 准教授 (60431649)
中井 信介 佐賀大学, 農学部, 准教授 (90507500)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 牧畜 / 熱帯 / 政治生態学 / 家畜市 / 資源利用 |
研究実績の概要 |
世界の熱帯地域のなかでモンスーンアジア地域に焦点をあてて、牧畜の生産および流通の実態およびその変化を把握する研究を進展させてきた。調査地域としては、ラオス(中辻、高井、中井、池谷)タイ(増野、中井、高井、池谷)ミャンマー(高井)、バングラデシュ(池谷、ファルーク)、インド(篠田)、ネパール(渡辺)、日本の琉球列島(増野、池谷)などであり、研究対象とする家畜は、対象地域によって異なるが、水牛、牛、ブタ、ヒツジ、ガヤル、馬、鶏、アヒル、ミツバチなどの家畜に焦点が当てられた。 各自の研究を個別にみると、インドの農業先進地域、農業機械化が展開している地域、農地や放牧地の工業団地や住宅地への転用が進んでいる地域では、牛飼いカーストの酪農からの離脱が急速に進んでいることも確認できた。また、バングラデシュでは、これまでベンガルデルタにおけるブタの遊牧が報告されていたが、南東部のチッタゴン丘陵ではブタの放し飼いが一般的な飼育の方法であった。さらに、タイを経由して中国とベトナムに水牛を食肉用として流通していく状況、牛の場合、東北部などの牛がいったん中部のファームで肥育されてから中国へ流れる状況等が続いていることを確認した。さらに、タイ北部の山地を中心に家畜飼育および家畜利用状況に関する調査を実施した。インテンシブな調査をおこなった村では、出稼ぎのため村を離れる者が増えるなかで,村での活動は活発ではなくなっており、家畜飼育も活発ではなくなっている。村で活動する人びとの現金収入源として、赤米の販売やキャッサバの販売が重要になっていた。これらは、山村の生業複合論としてタイのみならず他の地域にも当てはまる状況を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に引き続き、モンスーンアジアの個別地域から十分な地理的および経済的側面から家畜飼育に関する基礎資料が収集されたことになる。また、当初の目的をより十分に達成するためには、家畜飼育の基盤を形成する季節的に変わる放牧地の状況、および家畜種によって多様な家畜管理の技術の実際ほか、メンバー内において共通する調査項目に応じて比較するアプローチが必要とされる。それによって、熱帯の家畜生産及び流通の理論的枠組みを構築することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、それぞれのメンバーが、これまで継続してきた異なる調査地において、牧畜の生産面および流通面の現地調査(フィールドワーク)を継続していく。なかでも生産面では、GPSを家畜個体につけることで1日の家畜の放牧ルートをトレースする方法、および放牧地の土地利用図を作成する方法などを共通にして行う。また、流通面では個々の仲買人の行動、および地域における消費行動などにおいてもメンバー内で共通して観察するように務める。さらに、今回の調査地のなかでバングラデシュのベンガル平野に焦点を当てて、複数の研究者が協同で調査を行う予定である。
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