研究課題/領域番号 |
26257105
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
横田 伸子 山口大学, 経済学部, 教授 (60274148)
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研究分担者 |
田中 洋子 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (90202176)
服部 良子 大阪市立大学, 生活科学研究科, 准教授 (10183089)
三山 雅子 同志社大学, 社会学部, 准教授 (90278458)
朴 昌明 駿河台大学, 法学部, 准教授 (00406539)
小谷 幸 日本大学, 生産工学部, 准教授 (30453872)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本:韓国:ドイツ / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 比較マクロ統計分析 / 比較事例研究 |
研究実績の概要 |
1990 年代以降、経済のグローバル化が急速に進展する中、日本、ドイツ、韓国では輸出指向型製造業が競争力の中心的位置を占める一方、国内では経済のサービス化が進んだ。この過程で、労働法や社会保障制度及び労働組合の保護や規制から排除され易いインフォーマルな就業や非正規雇用が3ヵ国で共通して急激に増大し、この傾向はとりわけ女性において顕著であった。そこで、本研究では、日・独・韓3ヵ国におけるサービス業のうち、特に女性非正規労働者が多いスーパーマーケット労働者と介護労働者、さらに日韓の銀行労働者を取り上げ、雇用・労働条件や働き方の実態とそれの現場レベルでの決まり方について国際比較研究を行う。さらに、彼女達の労働組合組織化の試みや労働組合の新しい役割についても比較調査する。 以上のような問題意識のもと、日・独・韓の研究者による国際ワークショップを2回に亘り開催した。そこでは、3ヵ国における「非正規労働者」の定義づけと分類方法のすり合わせを行い、その比較基準を確定するとともに、マクロレベルでの非正規労働者の実態と趨勢を比較分析した。これまで、非正規労働者の規模や趨勢の国際比較は多く行われてきたが、本研究では、比較対象地域の研究者が一堂に会し、各国の非正規雇用の歴史的背景を踏まえた上で非正規雇用の概念を厳密に確認した。このことによって、非正規労働者の国際比較研究の精度をより高めた点に本研究の第一の意義がある。 本研究のもう一つの意義は、労働統計のマクロ分析にとどまらず、女性非正規労働者の実態をより鮮明に浮き彫りにするために、複数の企業を対象に労働組合や人事担当者へのインタヴューを通じた企業、職場における事例研究に重点を置いたことである。平成26年度は、主に日韓のスーパーマーケットの労働組合及び韓国の介護労働者支援団体へのインタビュー調査を行い、日独韓3ヵ国の比較事例研究の足掛りを築いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、平成26年度の主な研究到達目標は、日本、ドイツ、韓国の非正規労働者の実態をジェンダーの視点から考察するために、比較マクロ統計分析の枠組みを作ることであった。この目標は、平成26年9月と平成27年1月の2度に亘って行われた日・独・韓の研究者による国際ワークショップで非正規雇用定義の厳密なすり合わせが行われた結果、ほぼ達成されたといえよう。すなわち、一旦、3ヵ国の比較基準とそれに基づく比較の枠組みができてしまえば、時系列の比較統計分析は容易である。 さらに、スーパーマーケットの労働者と介護労働者、及び銀行の労働者に事例研究対象を絞れただけでなく、何よりも日本の3企業、韓国の1企業といったスーパーマーケット大手の労組におけるインタビュー調査を両国比較の視点から実施できたことが重要である。労組のインタビュー調査は、本来、平成27年度の目標であったが、両国の流通業産別労組、及び韓国の労働NPOの協力を得て、インタビューにとどまらず、労組や企業内文献資料まで入手することができた。加えて、労働移動が激しく、分散して存在するため、アクセスがきわめて難しい韓国の介護労働者への実態調査及びインタビュー調査を、ソウル市の介護労働者支援事業団体や社会的企業の協力を得て実行に移せたことも当初の計画以上の成果と考えられる。以上によって、本共同研究は、比較事例研究の枠組みを構築することができ、以降の調査研究につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
日本、ドイツ、韓国の非正規労働者の実態について、ジェンダーの視点から比較マクロ統計分析を継続して行う。 同時に、日本、ドイツ、韓国における複数のスーパーマーケット企業の労働組合及び人事担当者、同3ヵ国の介護労働者及び事業者に対して、労働者の雇用・労働条件や働き方の実態とそれらの現場レベルでの決まり方について深層インタビュー調査を行う。とくに、ドイツにおける調査は、今年度、初めて行うので、労働研究所としてドイツでもっとも権威あるハンスベックラー財団社会経済研究所やギーセン大学の研究協力者の援助と協力を得て行う予定である。また、これら3ヵ国のスーパーマーケット労働者及び介護労働者に対して、上記の雇用・労働条件や働き方の実態に加えて、労働者の組織化について設問調査を行う予定である。 さらに、日韓の銀行労働者については、統計資料はもとより、日韓銀行の社史や企業内部資料及び労働組合が出している資料の渉猟と分析を主に行い、銀行における女性労働者の地位と役割の変遷を歴史的に比較分析する。 これらの海外比較調査の結果を分析し、その中間的成果を、日本社会政策学会秋季大会とLabor and Employment Relation Association(アメリカ雇用労働学会)大会において分科会を組織し発表する。上記の国内外の学会発表で得た知見と議論を充分踏まえた上で、最終的な研究成果の英文出版を目指す。
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