研究課題/領域番号 |
26257108
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
中西 久枝 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (40207832)
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研究分担者 |
内藤 正典 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (10155640)
横田 貴之 日本大学, 国際関係学部, 准教授 (60425048)
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
山根 聡 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (80283836)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トランス・ナショナル / 平和構築 / 安全保障 / 国際協力論 / 国民統合 |
研究実績の概要 |
本年度は、本事業の初年度であるため、当初の計画どおり、各分担者ともに各自の分担にそって予備調査を開始した。中西は、イランでの現地調査から、イラクでのイランのIS(「イスラム国」)との戦闘において、非国家組織でもある一方国家と一体化した組織でもあるイラン革命防衛隊の役割が大きい点、核交渉とイランの安全保障上の戦略とが連動している点を解明した。内藤は、トルコでの調査から、中東情勢が過去に例を見ないほど悪化し、従来の中東の秩序が崩壊しつつあるとの見解を出した。横田は、カイロで、ムスリム同胞団の傘下の医療NGOや同胞団関係政党にて聞き取り調査を実施した。その結果、現政権下でイスラーム主義運動の政治的周縁化が進む中、運動への根強い支持基盤が今も存在することを明らかにした。末近は、シリア内戦の現況を、国際関係論と安全保障研究の視点から分析し、イランとシリアの同盟関係が内戦の長期化、硬直化に作用していること、ヒズブッラーやISなどの非国家組織の役割が拡大していることを明らかにした。山根は、ロンドンの題詠図書館及びパキスタンのらーホールにあるイスラーム党(ジャマーアテ・イスラーミー)本部にて調査し、同党創設者で、現代イスラーム復興思想家アブル・アーラー・マウデゥーディー著作に関する調査、及び現在のパキスタンの治安、安全保障に関する調査を実施した。研究協力者のダニシマズ氏は、トルコの市民社会と権威主義化するトルコ政治の関係性について概況を把握する予備調査を実施した。総じて、平成26年度は、平成27年度の本格調査に向けた準備が順調に進んだと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者、分担者ともに当初の計画どおり、それぞれの分担地域及び研究領域において予備調査を実施した。詳細は、研究実績の概要どおりであるが、初年度である平成26年度は、主として①先行研究の調査、②平成27年度の本格調査に向けた予備調査を海外調査で実施すること、の2つを達成目標としていた。研究チームのメンバーは、①及び②ともに実施した。その結果。トランスナショナルな非国家組織、特にIS(イスラム国)の急激な勢力版図の拡大とともに、特にイラク、シリアにおいて、、各国の「国家の安全保障」を脅かす存在になったこと、それに伴う国家の安全保障のレジティマシーがトルコで問われる事態になったこと、ムスリム同胞団というエジプト国内で軍体制下でその活動が制限を受けている組織に対する人々の支持がいまだに大きいこと、イランの核問題が交渉国間で突破口が開けた一方、イエメンなどシーア派政権が暫定的に発足した国家において、イランとサウディアラビアのイラク及びシリアでの対立軸が発現したことで中東全体の安全保障が脅威に晒されている点などが明らかになった。こうした成果は、中東の国家安全保障とムスリム市民社会との錯綜した関係を洗い出すことが目的となっている本事業においては、変貌する中東の基盤的な見取り図となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、本事業の2年目であり、研究代表者、研究分担者、研究協力者がそれぞれ各分担者の研究地域及び研究領域に沿って、本格調査を実施する。シリアなど内戦で状況が悪化している地域への調査は実施しないが、それ以外の地域では、変化が激しい中東の情勢を国際的なネットワークを利用して情報を収集した上で、治安の確保が可能な地域は海外調査を現地の研究者と連携の上、実施する。ただし、中東情勢全般がよりいっそう不安定になり、現地調査をする上で調査者の安全確保に問題があるという判断になった場合には、欧米など他の地域で、当該研究分野の研究専門家との意見・情報交換や資料収集を行うことに研究の重点をシフトすることとする。
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