研究課題/領域番号 |
26257202
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤田 耕史 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80303593)
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研究分担者 |
福井 幸太郎 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館, 学芸課, 学芸員 (10450165)
杉山 慎 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20421951)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒマラヤ / 氷河変動 / デブリ / 質量収支 |
研究実績の概要 |
本研究は、アジア高山域における氷河変動とその影響を受ける水資源変動を把握、理解する上で、大きな不確定要素をもたらしている大型氷河の動態とその変動メカニズムを理解するために、ヒマラヤの大型氷河において、気象、質量収支、氷河ダイナミクスの現地観測をおこなう。大型氷河を特徴付けている土砂堆積物の融解への影響を考慮した氷河質量収支モデル、流動モデルを構築し、氷河変動を引き起こしている各種要因(気候変化などの外的要因/流動や地形などの内在的要因)の寄与を定量化し、衛星観測による広域解析を通じ、アジア高山域における氷河変動の実態を解明することを目的としている。 研究初年度である2014年は、ブータンヒマラヤの氷河において、これまで維持してきた自動気象計のデータ収集とセンサー更新をおこなうと共に、地中探査レーダ(GPR)をもちいた氷厚測定を実施した。氷厚測定に関しては、異なる周波数のアンテナでの観測を試行することで、今後より大型の氷河で実施する際の知見を得ることができた。 一方、大型氷河を特徴付けている土砂堆積物の融解への影響を考慮した氷河質量収支モデルについて、観測を予定しているネパールヒマラヤのトランバウ氷河を対象に解析をおこない、学術論文として出版した。また、中央アジアにおけるより長期の雪氷圏変動について、アイスコア解析による成果を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算の制約のため、研究初年度の観測ネットワークの立ち上げはできなかったものの、大型氷河の質量収支と流出を表現する数値モデルを先行して開発することができ、計画の進展としてはおおむね順調であると自負している。またGPRには様々な周波数のアンテナがあるが、予算の制約上も、現地でのオペレーション上も、複数のアンテナを購入、持ち込むことができないが、同タイプのGPRを借用し、ブータンヒマラヤの氷河で運用することで、それぞれのアンテナのパフォーマンスを確認することができたことも、論文としての成果にはならないものの、研究遂行上重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度はネパールヒマラヤのトランバウ氷河に赴き、自動気象計とステーク観測網を設置すると共に、GPRとGPSによる表面と氷厚の測量観測をおこなう。初年度に開発した氷河質量収支モデルでは、気温減率と降水の高度勾配が大きな不確定要素であるため、今後の現地観測によって明らかにしていく予定である。 本研究と並行して作成した、アジア高山域を網羅する氷河台帳のデータを利用し、より広域における、気候変動に対する氷河の応答特性についても解析を進めることで、現地観測で得られた知見をどのように広域に展開していくかについての理解を進める予定である。
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