研究実績の概要 |
2017年10~11月にかけて、ネパール・ロールワリン山域のトランバウ氷河に設置した観測網の再測定をおこない、気象、質量収支、氷河流動、デブリ内の温度分布のデータを回収した。地中探査レーダ(GPR)による氷河の氷厚観測に関しては、前年度実施した際に岩盤からの反射シグナルが弱かったため、アンテナを変更して実施したところ、良質なデータを取得することができた。この結果、二年分の質量収支に関するデータを取得することができた。 データ解析の結果、5800mという高標高においても融解しており、質量収支がほぼゼロであった。観測で得られた質量収支について、数値計算モデルでの再現を試みたところ、これまで考えられていた降水の高度分布は質量収支を過大評価する可能性があることが明らかになり、モデル改良のための方針が明確となった。 並行して、2015年に発生したゴルカ大地震の被害調査を論文としてまとめるとともに(Fujita et al., 2017)、衛星データ解析による氷河変動(Lamsal et al., 2017; Nuimura et al., 2017)、デブリ氷河の形成と変動に関する統計解析(Ojha et al., 2017; Salerno et al., 2017)を出版した。更に、アジア高山域をカバーする広域において、気候変化に対する氷河の応答の地域的な違いとその要因を明らかにした論文を出版した(Sakai and Fujita, 2017)。近年急激に増加したヒマラヤの氷河研究についての総説論文を海外の共同研究者と共に出版した(Azam et al., 2018)。
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