研究課題
カンブリア爆発に引き続いてオルドビス紀におきた急速な生物多様化 (GOBE)によって各種動物の多様化とともに個体サイズの大型化がおきた。本研究の目的である古生代オルドビス紀における急速な動物多様化事件の原因について研究するため、世界の中でも極めて良好な連続的地層試料が得られる北欧エストニア国において野外調査と掘削による地層試料の採取を行なった。背景で起きたグローバルな環境変動を理解する上で、連続試料の化学分析、とくに炭素ほかの同位体比の測定が不可欠である。当初の研究計画では、新たにオルドビス系を貫く掘削試料を回収する予定であったが、初年時に連携研究先であるエストニア国地質調査所より、その一部の区間について既存のコア試料の提供がなされることが判明した。そこで、まずこれらのコア試料の分析を進め、一方で、野外調査に基づき、未回収部分のコア採取を二年次に行なうことにして、昨夏に現地で調査と追加試料採取を行なった。岩石薄片の観察・記載を進め、全岩化学組成、無機炭素とストロンチウム同位体比を測定した。その結果、オルドビス系中部統(Volkhov、Kunda、Aseri、LasnamagiそしてUhakuユニット)が、深い場で堆積した海緑石質砂岩から浅海成の炭酸塩岩へと岩相変化し、局部的にooliteを多産することをみつけた。陸棚縁辺の斜面上部から大きく浅化し、潮間帯に至ったことを記録している。石灰岩のC同位体比はKunda-Uhakuユニットにかけて約2パーミル正シフトし、特にAseriユニットでMDICEに対比される正シフトが識別された。明瞭な動物多様化は海水準変動と炭素同位体変動の直後におきたことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究のような過去の生物変遷の解析に関わる研究では、その記録を保持する連続地層試料の確保が最もクリティカルである。本計画では、幸先よくエストニア国地質調査所から研究対象の一部について保存良好な既存のコア試料を提供してもらえたこともあって、速やかに多様な化学分析を開始出来た。そのため二年次の中頃までにコア記載のデータを得ることが可能となった。
基本的なコア記載は終了したので、現在進めている化学分析をさらに進める。とくにこれまで試みられていない硫黄や窒素の同位体比についても分析を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Gondwana Research
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