研究課題
本年度には、エストニア国および中国南部雲南省において下部古生界の野外地質調査を行った。また採集した大量の岩石地層試料について、主に東京大学において様々な分析を行った。また瀬尾の成果報告のために複数回国際学術会議において口頭発表を行い、また複数の論文を国際学術誌に投稿した。2015年8月後半にエストニア国を訪ずれ、主に北海岸沿いのSaka, Kunda, Bao, およびPakriセクションにおいて、連続試料の採取を行った。調査には研究代表者と同研究室の複数の大学院生(島塚、中畑、飛田)の他に、海外の連携研究者であるタリン工科大学のH. Bauert博士、カリフォルニア工科大学のJ.L. Kirschvink教授が参加した。採取した大量の岩石試料は速やかに日本に船便で輸送した。南中国における調査ならびに試料採取については、同国内の事情で平成27年度に予定していた計画が実施できず、平成28年度に延期し繰越申請をした。しかし、同年も現地における水不足のため掘削が困難となったため、急遽計画を変更し、同じ目的で別地域における地表試料採取に切り替えた。同年8月に雲南省において野外地質調査と試料採取を行った。調査には研究代表者と同研究室の複数の大学院生(河野、長谷川)の他に、海外の連携研究者である中国西北大学大学博物館研究員の劉 偉博士が参加した。採取した大量の岩石試料は速やかに日本に船便で輸送した。日本に送られた岩石地層試料について、速やかに微量元素組成や炭素同位体比の分析を開始し、また一部試料は連携研究者がいるカリフォルニア工科大学へ移され、特に古地磁気測定を行った。
2: おおむね順調に進展している
エストニアで採取した岩石試料について、微量化学分析および炭素同位体比の測定を行った結果、オルドビス紀中部層の対比において極めて重要なマーカーとなるM-DICEと呼ばれうる正異常帯を識別することができた。またこれらの地層は、化石を多産する石灰岩を主体とするが、その中に砕屑粒子が多く含まれる層準があることが微量元素の濃集から明らかになった。この時期に海棲動物の多様化が急速に進み始めたこと、また隕石衝突による津波堆積物が他地域から報告されており、それらの因果関係を探る際の手がかりを得た。またこれらの石灰岩については従来測定不能とされていたレベルの微弱な地磁気シグナルについて、新しい手法によって解読可能であることがカリフォルニア工科大学での予察的測定で確認された。これで地球磁場と表層環境変動の因果関係の有無について具体的検証が可能となった。またオルドビス紀における動物多様化の反面、同末期に起きた顕生代最初の大量絶滅事件について、古生代末の大量絶滅事件との比較が可能であることが判明し、連携研究者らと新しい段階の議論を始めることが可能となった。一方、カンブリア系下部についてもSSFと呼ばれるカンブリア紀最初期の動物化石の分析を進め、従来想定されていたよりもさらに早い時期に動物の急速な多様化が起きたらしいことが判明しつつある。これらの多様な成果について、国内外の学会において口頭発表を行い、さらにいくつかの成果について複数論文化し、すでに国際学術誌に投稿した。
野外地質調査、表層露頭岩石および掘削岩石試料の確保はほぼ完了し、また室内分析も順調に進んでいるので、最終年度においては残る試料の分析の完了と、データの整理および総合的な考察を進める予定である。そのために、国内の分担者および海外の連携研究者たちと頻繁に議論を行い、さらに論文執筆や学会発表などの成果公表を進める予定である。
すべて 2017 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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