研究課題/領域番号 |
26257212
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
磯崎 行雄 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90144914)
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研究分担者 |
石川 晃 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20524507)
河合 研志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20432007)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 顕生代 / カンブリア紀 / オルドビス紀 / 動物多様化 / 表層環境 / 進化 / 絶滅 / 南中国 |
研究実績の概要 |
当年度には、2回にわたって中国南部の雲南省北部老林地域および東部澄江地域ほかにおいて下部古生界の野外地質調査を行った。調査には研究代表者と同研究室の大学院生複数名と、中国陝西省西安の西北大学の張 興亮教授および劉 偉研究員が参加した。その際に下部カンブリア系の連続層について大量の地層/岩石試料を採取した。またそれらの試料は速やかに日本に輸送して、東京大学において化学分析を始めた。
一方、前年度までにエストニアから連続的に採取した地層試料について、連携研究者のカリフォルニア工科大学J. Kirschvink教授の研究室において多数の岩石磁気の測定を実施した。その結果、これまで残存磁化強度が微弱で測定不能とされていた石灰岩試料からも信頼できる測定値が得られた。新しい知見としてオルドビス紀の前半から中葉にかけて極めて安定な磁場が継続したことを北欧で初めて確認し、またその安定期の終了時期を正確に特定することにほぼ成功した。
当年度には、古生代の動物多様性の変遷およびオルドビス紀の古地磁気極性の変遷について、5編の英文論文をNature Communications, Lethaia, Palaeogeography Palaeoclimatology Paleoecology, Global Planetary Change, Journal of Asian earth Sciencesなどの国際学術誌に投稿した。そのうち2編が印刷済みとなり、2編が査読後に修正投稿しており、近い時期に受理される予定である。また国内の学会では16回、ベルギーおよび英国など3回の国際学会で口頭発表を行った。さらに海外の大学からの招待講演を1回行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにエストニアにおける野外地質調査、表層露頭岩石および掘削岩石試料の確保は完了した。また南中国における野外調査は、予定外の地域にも範囲を広げ、より大量の岩石の確保が進んだ。その中で、予想通りの結果に加え、予想外の新発見(顕生代で最古の軟体部を保存した大型化石の発見など)が加わって、研究がさらに前進している。その成果は論文化して、Nature Communications誌に投稿中である。
一方、室内分析においても、手間のかかる古地磁気測定がほぼ完了した。その成果は、すでに論文化して投稿中(Grappone, Isozaki et al. Palaeo-3誌 in revision)である。
また岩石の化学組成、特に微量元素組成と炭素、硫黄、窒素などの安定同位体比の測定も順調に進んでいる。これらの成果を通して、動物多様化の実態が判明するとともに、オルドビス紀末に起きた古生代最初の大量絶滅とペルム紀末に起きた古生代最後の絶滅を比較することで、動物多様性の変化の理解に新たな視点を提示することが可能となった(Isozaki & Servais, Lethaia誌 in revision)。
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今後の研究の推進方策 |
野外地質調査、表層露頭岩石および掘削岩石試料の確保はほぼ完了し、また室内分析も順調に進んでいるので、最終年度においては、残る試料の分析の完了と、データの整理および総合的な考察を進める予定である。そのために、国内の分担研究者および海外の連携研究者たちと頻繁に議論を行い、さらに論文執筆や学会発表などの成果公表を進める予定である。
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