研究課題/領域番号 |
26257309
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研究機関 | 東日本国際大学 |
研究代表者 |
黒河内 宏昌 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 教授 (70225291)
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研究分担者 |
稲蔭 博子 (内山博子) 女子美術大学, 芸術学部, 教授(移行) (20289896)
池内 克史 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 名誉教授 (30282601)
吉村 作治 東日本国際大学, 経済経営学部, 学長 (80201052)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 古代エジプト / 木造船 / 保存 / 復原 / 建築史 / 考古学 / 三次元物体変形モデル / コンピュータグラフィックス |
研究実績の概要 |
本研究は、エジプト・ギザ遺跡のクフ王ピラミッド足元のピットに解体して埋納されている、今から約4600年前の世界最古の木造船「クフ王第2の船(仮称)」(紀元前2600年ころ)の復原考察を行うことを目的としている。「第2の船」は鉄の無い時代に造られた後世とはまったく異なる構造を持つ船であり、当初は約40メートルの長さを持っていたと思われる大型木造構造船である。またピット内に保管されていたため、部材が100%残存しており、人類の木造構造物の歴史上極めて貴重な遺構である。 本研究の方法は次のとおりである。A.まずギザ遺跡の現場において部材をピットから取り上げ、保存修復する。B.次に部材をマニュアル測量し図面とスタディ模型を用いて復原考察を行う。C.また一方で部材を三次元測量し、専用のシステムを開発してコンピューター内で組み立て復原のシミュレーションを行い、B.の結果と比較考察する。D.復原像を表現する方法を研究し、CG、イラスト、模型などで実際に表現する。 ギザ遺跡のクフ王の船は2つのピットにそれぞれ1隻ずつ、合計2隻埋納されており、「第1の船(仮称)」はすでにエジプト考古省によって1980年代までに取り上げ、組み立て復原を終えている。我々の対象となる「第2の船」の部材総数は、その「第1の船」と同様であると考えると約1200点と推測される。 現場では甲板室や甲板など船の上部構造に属する部材の諸作業を2016年度までに終了し、2017年度からは船の下部構造すなわち船体を構成する大型部材の取り上げを開始した。しかしピット内の保存環境が劣悪であったため、「第2の船」の部材は予想以上に劣化しており、大型部材の取り上げと保存修復、測量の作業のためには、専用の設備を新たに製作し、極めて慎重に行わなくてはならなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A.部材の取り上げと保存修復(担当;吉村作治);2017年度に発掘現場のピットから取り上げられた部材は65点、うち長さ4メートルを超える大型部材は36点であった。また保存修復を終えた部材は69点で、うち大型部材は35点であった。大型部材は「第1の船」を参照すると合計約70点あると推定され、1点当たりの作業量、作業日数は小型部材の約10倍に相当する。2017年度までの累積総数は、取り上げ787点、保存修復785点となった(全体は約1200点と推定)。 B.マニュアル測量と復原考察(担当;黒河内宏昌);2017年度にマニュアル測量を終えた部材は141点、うち大型部材は27点であった。累積総数は777点である。2017年度までに甲板室と甲板、そして櫂周りの部材の測量と図化を終え、復原考察を行った。 C.三次元測量とモデリング(担当;池内克史);取り上げと保存修復を終えた部材は、破損や変形、収縮などを受けており、当初の寸法形状とは異なっている。マニュアル測量では図面上で当初の寸法形状を推定して復原考察を行っているが、我々は三次元測量のデータを用いてコンピューター内で部材の破損や変形、収縮を適切に修正し、部材の当初形状を復原した上で、それらを組み立て復原するモデリングシステムを開発する。2017年度は甲板の部材のデータを用いてこのシステムの基本プログラムの開発を終了した。 D.CG、イラストと模型による復原像の表現(担当;内山博子);2017年度までに、部材のテクスチャーの復原イラストを作成し、さらに甲板室と甲板の1/10スケール模型を製作。B.のマニュアル測量による復原考察と連携して、復原像の表現について研究を継続した。 なお、測量を終えた部材のうち175点(うち大型部材12点)を大エジプト博物館保存修復センターの収蔵庫へ移送した。移送を終えた部材の累積総数は644点となった。
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今後の研究の推進方策 |
A.部材の取り上げと保存修復(担当;吉村作治);最終年度にあたる2018年度は引き続き、大型部材約30点を含む残り約400点の部材の取り上げ、保存修復を、出来る限り速やかに、かつ慎重に継続する。 B.マニュアル測量と復原考察(担当;黒河内宏昌);2018年度は甲板梁、舷檣、船体の舷側板といった船体下部構造の部材の測量と図化を進め、それらの復原考察を進める。 C.三次元測量とモデリング(担当;池内克史);2018年度は甲板梁、舷檣、船体の舷側板といった船体下部構造の部材の測量を進め、2017年度に作成したモデリングシステムをより精度の高いものへと開発し、三次元測量による船体の復原考察を進める。 D.CG、イラストと模型による復原像の表現(担当;内山博子); 2018年度は櫂周りの模型を作成し、さらに甲板梁や船体の舷側板などの復原模型を作成する。 E.復原考察のまとめ(担当者全員);以上のようにして2018年度までに完了した復原考察を図面、模型、三次元モデルにて提示する。
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